日別アーカイブ: 2019年2月4日

【第53回】スマホ写真の見すぎで「読解力」が退化!? 楽しく「言葉のトレーニング」ができる2つの学校授業

【第53回】スマホ写真の見すぎで「読解力」が退化!? 楽しく「言葉のトレーニング」ができる2つの学校授業

突然ですが、あなたは離れた相手に「こんな面白いものを見つけたよ」と伝えたいとき、どのような方法をとっていますか? スマートフォンや携帯電話で写真を撮って、相手に見せたりSNSにアップする。そんな方も多いのではないでしょうか。

言葉であれこれ説明するより写真を見せたほうが、インパクトもあるし話も早いですよね。通信技術の発達とともに、とても便利な時代になりましたが、実はここに落とし穴があるということをご存じでしょうか?

その落とし穴とは、言葉の「表現能力」の低下。

わたしたちは、知らないうちに「言葉“だけ”で物事を伝えること」をしなくなりつつあります。「目的地までの行き方」や「料理の手順」をネットや図のコピーに頼らず、自分の言葉だけで「的確に」伝えることって案外難しいですよね。

ビジュアルでのコミュニケーションに依存しているうちに、言葉の能力が退化してしまう……としたら、もったいない話。デジタルネイティブといわれる現代っ子たちの読解力低下が危ぶまれているのもうなずけます。

でも、ご心配なく!弱った能力はトレーニングすれば必ず復活できます。
今回は、言葉でのコミュニケーション能力を鍛える「学校の楽しい授業」を紹介します!

■パラリンピックの競技、目隠しでボールを蹴る「ブラインドサッカー」

1月30日、さいたま市岩槻区の小学校で視覚に頼らないサッカー「ブラインドサッカー」の体験学習がありました。
ブラインドサッカーとは、アイマスクで目隠しをしたプレイヤーが、鈴が入ったサッカーボールを蹴ってゴールに入れる競技。2020年に行われるパラリンピックでは、視覚障害者の種目としても選ばれています。テレビ埼玉のニュース動画を見ると、参加した5、6年生の生徒たちは、ボールが転がるときの鈴の音と仲間が誘導する声と手拍子だけが頼りに動いています。
この競技が難しいところは、ボールが止まってしまうと鈴が鳴らない=位置がわからなくなる点。
ボールが探せなくなった子には、アイコンタクトやジェスチャーが通じません。なので、「そこにボールがあるよ!」だけでは不十分。「〇〇ちゃんの右斜め前、半歩進んだあたりにあるよ」と説明する必要があるのです。左右の指示も、相手から見た向きに合わせなければならないし、競技なのでスピード感も求められます。
この体験学習は、来年の東京オリンピック・パラリンピックへの関心を高めることや、コミュニケーション能力の向上を狙って行われたそうですが、特に言葉の鍛錬にも役立ちそうですね。

■「オセロの並び方」を言葉だけで実況中継

お次は、小学4年生を対象とした「オセロの並べ方」の授業です。

なになに、レクリエーション!?と思ったあなた。まずは一緒にやってみましょう。東洋経済ONLINEのレポート記事「子供の『読解力を高める授業』が本質的すぎた」には、実際にモデル事業で行われた例題が紹介されているので、その例題を引用して説明しますね。

まずは、あなたの手元にオセロの玉(石)が6つあると思ってください。次の問い(授業では「実況中継」と呼んでいるそう)を読んで、どんなふうに玉を並べるか想像してみてください。紙に書いてみてもOKです。

問1「黒玉3つと白玉3つが横一列に並んでいる」を正確に図で表そう
いかがでしょうか? いろいろな並べ方ができましたね。

解答例「●●●〇〇〇」「〇〇〇●●●」「●〇●〇●〇」「〇●●〇〇●」…
条件は、「黒と白が3つずつ」と「横一列」。これを満たしていれば、どんな並べ方でもOKだったのです。

では、次はどうでしょう?
問2「黒玉と白玉が交互に横一列に並んでいます」を正確に図で表そうまずは、以下のような並べ方が思いつくでしょう。

解答例1「●〇●〇●〇」「〇●〇●〇●」
あれ、でもそれだけですか?? ほかにもあるはずです。

解答例2「●〇●〇」「〇●〇●」「●〇●〇●」「〇●〇●〇」…
そうです。問いの条件には「玉を6つすべて使う」とは書いていないんですね。このように、「抽象的な文」を「形あるもの」に変換するためには、文が定義しているポイントを過不足なく押さえていくことが必要なのです。

逆に、その文を読んだ全員が「〇●〇●〇●」と玉を並べる文は、どのようなものか?
という問いもあり、目の前の現象を「抽象的な文」に変換するトレーニングもありました。これは冒頭の「料理のレシピ」や「目的地への道順」の説明に通じるものがありますね。

なるほど。これは頭の体操になって面白いなぁと思ったら――
実はこれ、昨年話題になった『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者・新井紀子さんが、子どもの読解力を高めるために「開発」した授業なんです。

今回紹介したのは、ともに小学生向けの授業ですが、中高生やオトナにも応用できる内容です。「状況を的確に“言葉”だけで表す」ということを、毎日の会話やメールに取り入れてみてはいかがでしょうか?続けていれば、読解力や表現力がびっくりするほどアップするかもしれませんよ。

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