横断歩道で小学生へ「おじぎ」教育、
反発する前に考えたい「当たり前」と「感謝」のバランス感覚
ソーシャルディスタンスやひじタッチなど、時代の環境で変化するのがコミュニケーションの面白いところ。江戸時代には雨の日にすれ違うとき、互いの傘がぶつかったり相手を濡らしたりしないように、自分も相手も傘を外側に傾ける「傘かしげ」というお作法があったそうですね。
そして先月は、千葉県で行われたある交通教育が話題になりました。
4月8日付けのテレ朝ニュースによると、信号機のない横断歩道で一時停止した車にお礼をする取り組み。新1年生およそ200人に、実際の横断歩道を使って講習が行われたそうです。
■ドライバーが喜んでくれるかなって
映像に流れたのは、止まった車に対して「ありがとうございます」と丁寧に頭をさげるランドセル姿の子どもたち。近年は歩道に車が突っ込むなど、子どもたちが犠牲になる悲惨な事故が増えているため、「双方がコミュニケーションをとることで、一時停止への意識変化を期待する」というものでした。
「(ドライバーが)喜んでくれるかなって」という女の子のセリフは、もしかしたら言わされてる……?なんてうがった見方をしてしまった私ヤスコですが、いずれにしても子どもたちにお礼を言われたら、ドライバーが温かい気持ちになるのは想像に難くありません。「こんなことなら、次も止まろう」と思う人もいるのではないでしょうか。
一見、日常の一コマを飾った、ほほえましいニュース。しかし、実はその先にちょっとした展開がありました。
■当たり前なのだから、感謝は必要ない?
数日後のYahoo!ニュース(掲載元:弁護士ドットコムニュース)で、この取り組みへの反発の声が紹介されていたのです。
主にネット上の意見だそうですが、要約すると以下のような感じ。
・法律では車が停止するのが当たり前なのだから、へりくだって感謝させるのは違うと思う
・重たいランドセルを背負っているのにかわいそう
確かに「歩行者優先」は、日本の道路交通法の大前提です。横断歩道を渡ろうとする歩行者がいるのに一時停止しない場合は、「横断歩行者妨害」となり、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金の罰則があります。
だから、先ほどの主張も筋が通っていると言えます。小学生のランドセルの重さについても、問題になっていた昨今。そこまでさせる必要ある・・・? という意見も頷けますね。
■コンビニの店員さんとお客さんに置き換えてみる
ヤスコ個人的にはどちらの意見も「あり」だと思いますが、このとき不思議と思い浮かんだのは「コンビニの店員さんとお客さん」の関係でした。
コンビニで支払いをするときのお客さんって、無表情な人が多い印象を受けます。たまに「店員さんの態度が悪い」という声も聞きますが、もしかしたらお客さんが「ありがとう」とにっこり言い続けていたら、気持ちよく接客してくれる店員さんがもっと増えたりして。
たしかに代金を払ったのだから、商品を受け取るのは当たり前なんですけどね。
横断歩道の話に戻ると、ランドセルが重かったら手を振るなどのボディランゲージで感謝を伝えるのもよさそうな気がします。それに、科学的にも「脳は矛盾を嫌う」という特性があって、先に感謝されるとそれに見合う行動をとりたくなるものらしいですよ。ドライバーさんにもそれがきっと当てはまるはず。
みなさんはどう思いますか?
「お礼を伝える、伝えない」問題。
これは子どもの教育のみならず、わたしたちの普段のコミュニケーションにも通じる、想像以上に深いテーマなのかもしれません。
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