発達障害(ASD・ADHD・LD・グレーゾーン)の子の高校受験対策

公開日:2024年3月13日

お子さんが発達障害と診断された際に、「中学卒業後の進路」「高校受験をどうやって乗り越える?」「適切な高校を選べるのか?」といった不安に襲われるかと思います。
しかし、発達障害の傾向が強くても、正しい知識をもって適切なサポートを行えば高校進学は実現できます。近年では、進学先の選択肢も様々で、さらに学習面での支援方法も充実しています。
このコラムでは、発達障害のあるお子さんに特化した、高校受験の対策や注意点、学校選びやサポートのあり方、特性に合わせた試験対策について、お子さんと保護者の皆さんに役立つ情報をご紹介します。

発達障害の子の進学先

全日制高校への進学

発達障害の傾向が強いお子さんでも、全日制高校を受験し進学することは十分可能です。
ただし、公立の全日制高校を受験をする場合、普通学級に在籍していないと受験が不利になる可能性があります。なぜなら、特別支援学級に通うと普通学級と同じテストを受けることができない為、内申点がつかないからです。
一部の私立高校や定時制高校では内申点が重視されない場合もありますが、公立の全日制高校受験においては、内申点を重視している学校が多いです。そのため、全日制高校を受験する場合は、普通学級に在籍することが最低条件になります。
ただ、発達障害のお子さんが普通学級に在籍する場合、授業についていくことのハードルは高いです。また、提出物の量も多く、提出期限も厳格なため、対応できない場合は調査書(内申点)に響いてしまいます。その結果、高校進学が困難になるケースもあります。
ですので、普通学級の授業についていくための学習法や、提出物の管理を保護者など周りの大人がサポートするなど、高校受験に向けた早期の対応や工夫が必須です。

通信制高校への進学

通信制高校とは、全日制高校と異なり、毎日学校へ登校する必要のない高校のことを指します。学校へ登校する代わりに、レポートと呼ばれる宿題をタブレットやパソコンなどで提出し、卒業に必要な単位を取得します。卒業後は全日制高校と同様に高卒資格を取得することができます。
ただ、全く学校に通わないということではありません。通信制高校には定期的に「スクーリング」と呼ばれる登校日があります。頻度はお子さんによって異なり、全日制高校と同じように毎日登校する生徒もいれば、年に1回、合宿を行いその合宿を「スクーリング」と位置づけるケースもあります。
このように、通信制高校は登校の頻度をお子さんの特性に合わせることができるのが大きなメリットです。
また、通信制学校で働く職員の中には、発達障害の傾向が強いお子さんの指導経験が豊富で、特性を理解し、適切な指導や支援を提供できる方も多くいます。
卒業後の進路に関しても、全日制高校と同じように4年制大学への進学のサポートや就職活動のサポートも受けることができます。

定時制高校への進学

定時制高校とは、1回45分の授業を1日4時間受け、4年間学校に通うことによって、高卒資格を取得できる学校です。
最近の定時制高校は、お子さんの特性に合わせて登校時間を選択できる学校も増えています。定時制高校は「昼夜間定時制」と呼ばれ、「午前の部」「午後の部」「夜間の部」といった三部制の中から自分に適したコースを選択できます。また、1日4時間以上の授業を受け、全日制高校と同じように3年間で高校卒業資格を取得するコースも選択できる高校もあります。
定時制高校は「登校の時間帯」「授業時間の長さ」「卒業までの期間」を選択できるため、発達障害を持つお子さんの特性に合わせやすく、長い時間集中することができない子にはおすすめです。

また、学校によっては、体育祭・文化祭・クラブ活動などの行事も行われており、全日制高校と同様の高校生活を送ることができます。
卒業後の進路については、就職する生徒は30%程度、大学や専門学校へ進学する生徒が35%となっており、近年は大学や専門学校への進学も増えています。

参照: 文部科学省 高等学校教育の現状

チャレンジスクール・エンカレッジスクールへの進学

チャレンジスクール・エンカレッジスクールは、発達障害などの理由で集団生活に馴染めず、不登校の経験のある中学生を主に受け入れる公立高校です。
チャレンジスクールは総合学科の定時制高校、エンカレッジスクールは全日制高校の位置付けとなっています。
各都道府県によって名称が異なり、例えば神奈川県では「クリエイティブスクール」、埼玉県では「パレットスクール」、千葉県では「地域連携アクティブスクール」と呼ばれています。

地域や学校によって異なりますが、基本的には調査書(内申点)をあまり重視せず、学力検査(英数国)、面接、作文などで合否が決まります。
高校入学後のカリキュラムは発達障害のある生徒も授業についていきやすいよう、基本的な内容から授業が開始されます。また、それ以外には一般常識やマナーを学べたり、言葉遣いに関する学習なども行われます。
卒業時にはコミュニケーション能力や社会性を習得することができるので発達障害の傾向が強いお子さんにもおすすめです。

参照 : 東京都教育委員会「多様なタイプの学校の紹介」神奈川県ホームページ「新しい学びのかたちから高校を探す」彩の国埼玉県「21世紀いきいきハイスクール構想」千葉県ホームページ「地域連携アクティブスクール」

高等専修学校への進学

高等専修学校(専修学校高等課程)は、中学校卒業後に専門知識を学ぶことができる教育機関です。
高等専修学校では、学習指導要領に沿った授業は行われず、工業・医療・調理・美容・福祉・商業・服飾など、興味のある分野を専門的に学ぶことができます。卒業後は社会に出て、その分野のスペシャリストとして働けるようなスキルを身につけることができます。
既に将来の夢が決まっており、自分の興味のあることを深く学びたいお子さんにはおすすめです。
ただし、一般的な高校と違い、高等専修学校では高卒資格は取得できません。(一部の高等専修学校では、通信制高校と連携し、高等専修学校に通いながら通信制高校のカリキュラムを修了することで高卒資格を取得できることもあるので学校毎に確認が必要となります。)

特別支援学校への進学

特別支援学校は、知的障害や身体障害などの障害を抱えたお子さんが進学する学校です。
個々の特性や障害に合わせて、3〜8人の少人数でクラスが編成されています。
入学後は、将来的な自立した生活をおくれるように、生活の中での困難を克服するトレーニングや、働くことの意義を学びます。
一般の高校では受けることのできないお子さんの特性に合わせた支援やサポートを受けられるのが大きなメリットです。
また、卒業後の進路は、就職や社会福祉施設への入所し、就労支援を受けることが多いです。
大学や専門学校への進学率は非常に低いため、特別支援学校から進学することはかなりハードルが高いです。

発達障害の子の高校受験への準備

特性に合った進学先の選び方

1. 学習スタイルで選ぶ

発達障害の傾向が強い中学生が進学先を選ぶ際に重要なことは、進学先の学習スタイルを考慮することです。
具体的には、「登校頻度」と「登校の時間帯」の2つが挙げられます。集団行動が苦手で強いストレスを感じる場合は、登校頻度を調整できる通信制高校などを選択することが望ましいでしょう。また、集中力が続かず、朝の活動が苦手なお子さんには、定時制高校が選択肢に入ります。
お子さんの特性に合わせた学習スタイルの高校を選ぶことで、安心して学校生活を送り、卒業まで無事に進むことができます。

2. 学習内容で選ぶ

発達障害の傾向が強い中学生が進学先を選ぶ際には、進学先の学習内容を考慮することも大切です。
中学までで学習した「英数国理社」といった科目に興味を持てない場合は、普通科の進学はおすすめできません。
例えば、機械やパソコンに興味があるお子さんであれば、工業科のある高校に進学することが適しています。また、最近はイラストや起業について学べるコースが用意されている高校もあり、お子さんの様々な興味に対応できる高校が増えています。さらに、高等専修学校では美容や調理など自分の興味のある分野を中学卒業後すぐに学べます。
有意義な高校生活を送るためにも、進学先の学習内容はとても重要なポイントです。

受験に向けた学習計画の立て方

発達障害の傾向が強い中学生が受験に向けた学習計画を立てる際は、早い時期から計画を立て、行動を起こすことが重要です。
例えば、部活動が終了した中学3年生の夏頃から受験勉強を始めるような「短期集中型」の学習計画はおすすめできません。短期間での集中的な勉強は、お子さんに強いストレスを与え、精神的に追いつめてしまう可能性が高いです。多少計画通りに学習が進まなかったとしてもフォローアップやカバーが可能な「余裕のある学習計画」を立てるようにしましょう。
もちろん、発達障害のお子さん一人で計画を立て、実行するのは困難です。保護者や家庭教師などの周囲の大人が協力し、進捗状況に応じて柔軟に計画を変更することも大切です。

受験勉強の工夫とサポート

発達障害の傾向が強い中学生に対して、受験勉強のサポートをする際に最も重要なポイントは学習の取捨選択です。
お子さんに対し「勉強すべき分野」と「勉強をしなくてもよい分野」を見極めてあげ、お子さんを「勉強すべき分野」に集中させていくことが大切です。
集中力が続かない子や、読み書きが苦手なお子さんにとって、全ての試験範囲を均等に学習することは困難です。
受験勉強を始める際には、まず塾の講師や家庭教師など、受験に詳しい第三者に高校入試の過去問などを分析してもらい、お子さんにとって「重点的に学習すべき範囲」を絞ってもらうことがおすすめです。その上で、得点が期待できる科目や、基礎的な問題を確実に解くことができるように学習を進めると良いでしょう。
例えば、応用問題などに対してはあまり時間をかけずに学習を進めることで、お子さんは集中力を持続して勉強できるようになります。

もっと知りたい方はこちら
【発達障害コース】について

特性に合わせた受験勉強のサポート

ASD(自閉スペクトラム症/アスペルガー症候群)の場合

ASDの傾向が強いお子さんの場合、大まかな指示を出してしまうと言葉の裏の意味を理解できない為、細かく具体的に指示を出してあげると良いでしょう。
例えば、「この単語帳に載っている英単語を、aから順番に毎日1つ英単語を覚えよう!」といったような、詳細で具体的な指示を出すことで力を発揮しやすくなります。
また、ASDの傾向が強いお子さんは、決まったルーティンに則って行動することで力を発揮します。例えば、「毎晩19時半から20時半の1時間は学習の時間に充てる」などの、学習ルーティンを定めてあげるとより効果的です。

ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)の場合

ADHDの傾向が強いお子さんの場合、本人の興味の持ちやすいもの(気が散りやすいもの)と切り離し、集中できる環境を作ると良いでしょう。
例えば、スマートフォンやゲーム機が近くにある状態だと、通知音などが鳴るたびに気が散ってしまい、その度に集中力が途切れてしまいます。勉強が終わるまでは保護者が預かるなど、何かしらのルールを設けることが重要です。
また、興味を持ったものは深くのめり込みやすいといった傾向を活かして、得意な科目についてはとことん勉強できるように促すと良いでしょう。得意科目を伸ばすことによってお子さんの自信もつきやすく、学習に対して前向きになるのでおすすめです。

LD(学習障害)の場合

LDの傾向が強いお子さんの場合、個別指導を導入することが有効です。
読字障害のあるお子さんには、文章の意味を分かりやすく説明する必要があります。同様に、算数障害のあるお子さんには、正負の数や分数、小数などを何度も丁寧に説明する必要があります。
これらの苦手分野は克服可能ですが根気が必要です。親子で取り組むことが理想的ですが、難しい場合は、家庭教師や発達障害に特化した個別塾など、第三者のサポートを受けることを検討すると良いでしょう。

発達障害についてもっと知りたい方はこちら
「発達障害の中学生の特徴と支援法」

受験本番までの注意点と対策

受験本番で力を発揮するためのサポート

発達障害の傾向が強いお子さんが受験本番で力を発揮するためには、可能であれば前もって受験会場の下見を行うと良いでしょう。
自宅から受験会場までの道のりや、会場の雰囲気を事前に確認しておくことにより、当日の緊張が和らぎ、お子さんの力を発揮しやすくなります。
また、会場模試を受けることもおすすめです。会場模試は、近所の高校などで定期的に開催されており、受験本番に近い環境でテストを受ける良いシミュレーションとなります。
このような事前準備をせずに受験当日を迎えてしまうと、周りの受験生の鉛筆の音で集中が乱れてしまうなど、実力を発揮しづらくなってしまうことがあります。

受験当日までのストレス管理

受験日が近づくにつれて、合格できるかどうかの不安や、これまでのように自由にゲームや動画視聴などの好きなことを制限しなければいけなくなり、お子さんは強いストレスを感じることがあります。ストレスが限界まで達してしまうと、非行などの衝動的な行動に出ることもあるので、適度なストレス解消が重要です。
例えば、週に1度はチートデイ(自由に遊んでいい日)を設けるなどといった、勉強のモチベーションを維持するための工夫を行うと効果的です。
お子さんの特性に応じてストレスを解消する方法を考え、受験本番で力を発揮できるよう心がけましょう。

受験後の注意点

高校受験が終わると、受験勉強のストレスから解放され、これまで我慢してきたもの(ゲームやスポーツなど)に没頭するお子さんが多く見られます。
特に、発達障害の傾向が強い中学生はその反動が強く、勉強を全くやらなくなってしまうことも少なくありません。
例えば、高校入学までに学習習慣がゼロに戻ってしまうと、入学後にいきなり赤点をとってしまうなど、高校生活を有意義に過ごせなくなってしまいます。

受験勉強を通じて学習習慣が身に付き、自分の得意科目が見つかったのであれば、学習を中断することはとても勿体ないことです。
親御さんから促しても聞く耳を持たない場合は、お世話になった塾の先生や家庭教師に相談してみるのも一つの方法です。お子さんと高校受験を乗り越えた先生からのアドバイスであれば、素直に受け入れる可能性も高いでしょう。

まとめ

発達障害を持つお子さんの高校受験の選択肢は、過去と比べ格段に増え、お子さんの個々のニーズに合わせた進路を選択できるようになりました。
しかし、選択肢が増えたとしても、受験勉強を進める上で家庭や第三者からのサポートが不可欠です。このコラムで提供される情報が、お子さんの個性を活かし、将来への道を拓くためのお役に立てれば嬉しく思います。
家庭教師のマスターでは、発達障害の傾向が強い中学生への学習フォローも行っています。ご相談だけでも構わないので、心配事がありましたら気軽にご連絡ください。

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この記事は、家庭教師のマスターを運営している株式会社マスターシップスの「家庭教師のマスター教務部」が企画・執筆・監修した記事です。家庭教師のマスター教務部は、教育関連で10年以上の業務経験を持つスタッフで編成されています。
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