発達障害のある子の中学受験とは?|メリット・デメリットを解説
公開日:2024年5月16日
発達障害を持つ小学生が、中学受験をする場合のメリット・デメリットについて詳しく解説します。また、発達障害のお子さん向けに中学受験の勉強方法もご紹介します。
私立の中学を検討している保護者の方は、是非ご一読下さい。
発達障害とは?
発達障害には、「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(ADHD)」「限局性学習症(LD・SLD)」「境界知能」「グレーゾーン」など、複数の異なる特性があります。
1人の子どもが複数の症状を示すことがあり、明確な境界線はありません。たとえば、ADHDの衝動性の特性とLDの算数障害の特性も有しているなど、複数の症状が同時に現れることがよくあります。
そのため、子どもの特性を正しく理解し、学習の中での困難や強みを見極めることが重要です。適切な学習方法を理解することができれば、多くの子どもが問題なく成績を伸ばすことができます。
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発達障害のある子の中学受験|5つのメリット
1. 子どもの特性に合わせた学校を選択できる
公立の中学に進学する場合は、一般的に家から近い学校しか選べません。また、在籍している先生の転勤が数年おきに行われるため、信頼していた先生が在学中に転勤してしまうこともあります。
一方、私立の中学では先生の転勤が少ないため、信頼できる先生に子どもを長期的に見てもらうことが可能です。
また、学校見学や文化祭などを通じて学校の雰囲気を事前に知ることができるので、発達障害のある子供へのサポート体制や支援の内容をしっかり確認した上で学校を選ぶことができます。
また、私立中学の生徒は同じ試験を受けて入学しているので、生徒の学力レベルに大きな開きがありません。入学後の学習において、学力差に悩まずスムーズに学習しやすい点もメリットとして考えられます。
このように、子どもの学力や特性に合わせて学校を選ぶことができる点が、発達障害のある子にとって大きなメリットとなります。
2. 人間関係をリセットできる
地元の公立中学に進学すると、小学校時の同級生と引き続き学校生活を送ることになります。小学校の時に発達障害の特性によって人間関係がうまくいかなかった場合、中学進学後も同様に人間関係で悩ませられる可能性があります。
一方で、私立の中学校に進学すれば、これまでの人間関係をリセットし、新しい環境でスタートを切ることができ、新たな友人たちと共に前向きな学校生活を送ることができます。
小学生の時に同級生とのトラブルを抱えていた場合は、環境を変えることも一つの手段です。複雑になってしまった人間関係を時間をかけて修復するよりも、思い切って違う環境へ移ることの方がスムーズに問題を解決できることもあります。
その手段として、私立中学への進学を検討することも一つの考え方です。
3. 中高一貫なので情報が引き継がれる
公立中学に進学した場合、受験を経て新たな高校へ進学するため、中学の先生と高校の先生の間で連携が不十分になる可能性があります。そのため、高校入学時には、発達障害の特性を再度理解してもらう所から始まってしまいます。
一方、私立中学は中高一貫制度になるので、中学と高校の連携がスムーズに行われやすくなります。
中学で受けていた「発達障害の特性に対する合理的配慮」をそのまま高校でも適用させてもらえることが多く、高校入学時に保護者が1から説明する必要がなくなります。
4. 大学への推薦枠が多い
公立高校に比べて、私立高校は指定校推薦の枠が多い傾向にあります。
ですから、お子さんが大学進学を目指す場合、一般受験をせずに推薦枠を利用して大学進学できる可能性が高まります。
また、私立の学校は、指定校推薦以外に特別推薦枠を設けている学校もあります。例えば、神奈川県の私立横須賀学院中学高等学校は2010年に私立青山学院大学と提携し、年間で35名もの推薦枠を確保しています。
このように、私立の中高一貫校に進学することで大学に進学できる可能性が高くなる側面があり、発達障害の特性上、あまり受験をさせたくない場合には私立中学への進学は得策と言えます。
5. クラブ活動が多彩
私立の中学では、公立中学ではあまり見かけないような多種多様なクラブ活動が行われていることがあります。
例えば、ロボコン部・eスポーツ部・生物部などが挙げられます。
このようなクラブの活動内容は文化祭で発表・紹介が行われており、中学生とは思えない程レベルの高い活動をしていることもあります。
発達障害の特性がある子どもたちは、得意なことや興味のある分野を伸ばすことで、目を見張るような成果を上げ、自信をつけることがあります。
得意分野において絶対的な自信をつけることで、苦手分野をカバーすることもできますし、将来的には大学へ進み、専門的な研究の道へと進むキッカケになることもあります。
ですから、子どもの興味を追求できるクラブがある場合は、その私立中学を受験するメリットが大いにあります。
発達障害のある子の中学受験|5つのデメリット
1. 受験勉強の負担
中学受験をするとなると日々の学習量が急激に増加します。
中学受験は、小学校で学ぶ学習内容に加えて「中学受験用の勉強」もする必要がありますが、その難易度は高く、量も非常に多いです。
一般的に、中学受験を目指す場合は中学受験用の進学塾に通うので、塾の宿題と学校の宿題の両方をこなさなければなりません。あまりにも学習負担が多くなると、発達障害の傾向がある子はやる気を失うこともあります。
また、中学受験用の進学塾では頻繁にテストが行われ、その順位は明確な形で示されます。例えば、成績によってクラスが変わったり、テストの点数順に教室内の席順が変わったりします。この様な環境下では、同じ塾に通う優秀な生徒と自分を比較し、自信を喪失してしまう可能性もあり、強い挫折感を感じて中学受験自体を諦めてしまうこともあります。
2. 地元の友人と離れてしまう
私立中学に通うメリットとして「新たな人間関係を築くことができる」ことを前述しましたが、この点についてはメリットばかりではありません。
小学校時代の人間関係があまり良くなかった場合は、新しい環境での出会いがメリットとなるかもしれませんが、反面、仲の良い友人や自分の特性を理解してくれる友人に恵まれていた場合は、その人間関係がリセットされることがデメリットになります。新しい学校で自分の特性や個性が受け入れられるかどうかは未知数であり、場合によっては、私立中学に進学することがデメリットとなる可能性もあります。
3. 授業についていけない
公立中学と比べ、私立中学は授業の進度が速く、その難易度も高めです。
発達障害の特性がある場合、私立中学の授業に適応できず苦労することがよくあります。この点については、文化祭や学校見学などの機会では判断しにくいので、慎重な判断が必要になります。
一度授業に遅れをとってしまうと、お子さんは徐々に学校に通うことへの苦痛を感じるようになり、最終的には不登校に至ることもあります。
苦労して私立中学へ入学したにもかかわらず、結果的には公立中学への転校を余儀なくされるケースもあるので、発達障害のあるお子さんが中学受験をする際には、授業の進度や難易度についても十分考慮しなければなりません。
4. 宿題・提出物の量が多い
私立中学では、公立中学に比べて提出物や宿題の量が多い傾向があります。
発達障害の特性が強いお子さんは、日々の提出物の管理や宿題の提出などで苦労することがよくあります。
例えば、日々の宿題・レポートや定期試験前の課題などが計画的にこなせず蓄積してしまい、期限内に終わらせることができない、などが考えられます。
これらを問題なくこなしていく為には、日々の学習計画立てや時間管理などの自己管理能力が不可欠になるのですが、発達障害の特性によっては、これらを実践することが難しい場合があります。
5. 成績が悪いと高校に上がれない
私立の中高一貫校は、いわゆるエスカレーター方式により無試験で高校へ進学できると言われていますが、一定基準の成績を下回っている場合、高校への進学はできません。
高校への進学が危うい場合、学校側から三者面談などを通じて事前告知されることが一般的です。このような場合、学校側は特別な補習授業や追試を実施し、何とか進学できるように計らってくれるのですが、それでも基準に達しなかった場合は高校進学への道が閉ざされてしまいます。
進学不可の告知を受けた後は、急遽高校受験に向けた勉強を始めることになりますが、これまで受験勉強をしていなかった分、時間的にもかなり厳しい道のりとなります。
また、高校に進めなかったということは、通知表の成績も悪いということになるので、内申点も低くなり、進学の道がさらに険しくなります。
高校受験の内申点についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「内申点とは何だろう?|基礎から学ぶ内申点の知識」
発達障害のある子の勉強方法|6つのポイント
1. 特性を活かす
発達障害の特性を活かすことで、中学受験の勉強を効率的に進めることができます。
例えば、子どもが興味を持っている科目から学習を始めることが挙げられます。
生物や自然科学に興味を持っている子は「理科」から、歴史や地理に興味を持っている子は「社会」から、漢字や読書に興味を持っている子は「国語」から、といったように、興味のある分野から学習を始めることで、学習意欲が高まります。
また、得意科目に取り組むことで自信がつき、他の科目にも良い影響を与えることがあります。
例えば、読書が好きなお子さんの国語力を伸ばすことで、算数の文章問題もできるようになる、などの効果があり、苦手科目の克服にも役立つことがあります。
2. 短期目標を定める
お子さんのモチベーションを持続させる方法として、スモールステップ(小さな目標)を活用することが有効です。
例えば、47都道府県の県庁所在地を全て暗記するといった課題の場合、一度に全てを暗記するというアプローチは、大きな負担に感じられてしまいモチベーションを失う可能性があります。
そこで、少しずつ進めていくスモールステップの考え方が役立ちます。例えば、「まずは関東地方から覚えよう!」というように、いくつかの課題に分割し、休憩を挟んでから次の地方に取り組む、といった手順で、分割しながら進めてみましょう。
小さな目標を設定し、一つひとつクリアしていくうちに、気が付いたら全て終わっていた!となるように進めていくことで、お子さんのモチベーションを維持しやすくなります。
3. ゲーム感覚で学習を行う
勉強をゲーム感覚で行うことも、発達障害のある子どもにとって効果的な方法と言われています。
例えば、ペーパーの問題集ではなく学習アプリを利用し、競争や報酬の要素を取り入れることで、受験勉強を楽しみながら進めることができます。
また、模擬試験を積極的に受けることも有効手段です。
模試を受ける度に偏差値や全国の順位が発表されますが、これらの数値を「目標」に活用することでモチベーションを上げることができます。最初のうちは得意科目のみでも構わないので、「全国〇〇位以内を目指そう!」といったような形で目標設定すると、お子さんのやる気が生まれやすくなります。
4. 十分な準備期間を確保する
発達障害のある子が中学受験をする場合、十分な準備期間を確保することが重要です。
発達障害のある子は、短期間で詰め込みをするような学習方法が不向きであることが多いので、長期的な視野を持ち、大きなストレスがかからないような「ゆとりのある学習計画」が必要です。
十分な準備期間が取れない場合は、無理をさせず、志望校のレベルを下げるなどの対応がオススメです。
5. 適度に息抜きをする
発達障害のある子が中学受験をする場合、子どもの特性や能力に合わせた「無理のない学習計画」を立てることが大切です。
過度なプレッシャーやストレスを与えないように配慮し、お子さんの様子に合わせて適度に気分転換をする機会を設けることも必要です。
例えば、思うように結果が出ず落ち込んでる時には、自然の多い場所に出かけてみたり、お子さんの好きな場所へ連れて行ってあげ、気分転換をしてあげることが効果的です。
適度に息抜きを挟むことでリフレッシュすることができ、受験勉強へのモチベーションも回復しやすくなります。
6. 特性を理解してもらえる塾や家庭教師を選ぶ
中学受験をする場合は大手の進学塾に通うことが一般的ですが、発達障害のある子の場合は進学塾が合っているとは限りません。
中学受験用の進学塾のほとんどは集団授業形式であり、授業の進度も速く、宿題の量も非常に多いです。発達障害の特性によっては、これらが負担となってしまい逆効果になることもあります。
発達障害のある子の場合は、まず、お子さんの特性を理解してもらうことが大切になるので、「中学受験=大手の進学塾」といった先入観だけで決めてしまうのはよくありません。発達障害のある子の場合は、一人ひとりの子どもに目が行き届く指導を行っている「個別指導塾」や「家庭教師」などが適していることが多いです。
中学受験の塾の選び方についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「中学受験の塾選びについて徹底解説!お子さんにピッタリの塾とは!?」
まとめ
今回のコラムでは、発達障害のあるお子さんが中学受験をする際のメリット・デメリットを中心に解説しました。
私立中学に進学することは、発達障害のあるお子さんにとって多くのメリットがありますが、反面、受験勉強の負担や入学後の学習についてなど、考慮すべき点も多くあります。
お子さんの気持ちや特性と向き合いながら、慎重に検討することをお勧めします。
このコラムの情報が、発達障害の特性を持つお子さんの進路選択の参考になれば幸いです。
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もっと知りたい方はこちら
⇒【発達障害コース】について
⇒【中学受験対策コース】について
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