発達障害の子どもが行う「オウム返し(エコラリア)」とは?

公開日:2024年9月5日

このコラムでは、発達障害(自閉症スペクトラム)の子どもが行うオウム返し(エコラリア)について詳しく解説します。また、エコラリアの特徴や影響、通常のオウム返しとの違い、親の対処法、子どもの発達との関連性についても解説します。

自閉症スペクトラム(ASD)の子が行うオウム返し行動(エコラリア)とは?

自閉症スペクトラム(ASD)の子どもたちに見られるオウム返し行動(エコラリア)とは、他者が話した言葉やフレーズをそのまま繰り返す行動のことです。
エコラリアは一見、会話の一部として自然に見えることもありますが、自閉症の子どもにとって、言葉や音を学び、理解し、安心感を得るための手段であることが多いです。

通常のオウム返しとは?

通常のオウム返しは、会話の中で相手の言葉を確認したり、共感を示すための行動です。
例えば、相手が「今日は暑いね」と言ったときに「そうだね、暑いね!」と返すことで、相手の言葉に同意し、会話を続ける意図があります。これは、コミュニケーションを円滑にするために日常的な会話で見られるものです。

自閉症の子が行うオウム返し(エコラリア)の特徴

自閉症の子どもが行うオウム返し(エコラリア)は、通常のオウム返しとは異なり、言語を学ぶ過程やストレスを軽減するために行われることが多いです。
エコラリアには、他者の言葉をすぐに繰り返す「即時エコラリア」と、過去に聞いたフレーズを後になってから繰り返す「遅延エコラリア」があります。これらは、コミュニケーションの一環というよりも、音や言葉のリズムに対する興味や安心感を得るための行動として現れることが多いです。

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通常のオウム返しとエコラリアの違い

次に、通常のオウム返しと、自閉症の子どもが行うオウム返し(エコラリア)との違いについて解説します。

1. 目的の違い

通常のオウム返し

通常のオウム返しは、会話の中で相手の言葉に対して共感や確認を示すために行われます。
例えば、相手が「この映画面白かったよね」と言った場合、「そうだね、面白かった!」とオウム返しをすることで、同意の意図を伝え、会話を円滑に進める役割を果たしています。

エコラリア

一方、エコラリアは、自閉症スペクトラムの子どもにとって、言葉や音のリズムを理解するための学習手段であったり、ストレスを軽減するための行動であったりします。
必ずしも他者とのコミュニケーションを円滑にすることが目的ではなく、子どもの内的な欲求から行われていることが多いです。

2. 文脈の違い

通常のオウム返し

通常のオウム返しは、会話の流れや文脈に沿って行われ、相手との対話をスムーズに進めるために使われます。例えば、相手が何かを確認したい時や、意見を求める時に使用されることが多く、会話の流れや文脈に合った形で行われます。

エコラリア

一方、エコラリアは、会話の流れや文脈に関係なく発生することがよくあります。
例えば、その場の会話とは関係ない特定の単語やフレーズが繰り返されることがあります。これは「言葉の音やリズムに対する興味」や「安心感」を求めているためです。
特に、過去に聞いた言葉が突然繰り返される「遅延エコラリア」では、その場の会話とは全く関係ないことがよくあります。

3. 会話への影響の違い

通常のオウム返し

通常のオウム返しは、相手との会話をスムーズに進めたり、関係や共感を深める役割があります。相手の言葉や話題に対して適切に反応することで、自身に関心や理解があることを相手に示すことができます。

エコラリア

一方、エコラリアは会話に混乱をもたらすことがあります。
特に、その場の会話の流れや文脈に合わないフレーズが繰り返される場合、相手がその意図を理解するのが難しくなり、コミュニケーションが一方通行になりがちです。
そのため、対話が滞ってしまったり、相手を困惑させたりすることがあります。

エコラリアがもたらす影響

エコラリアがもたらす影響は多岐にわたります。エコラリアが日常生活や学校生活でどのような影響を及ぼすか?を理解することは、子どもの成長をサポートするためには重要です。
以下では、エコラリアが引き起こす可能性がある課題について解説していきます。

1. コミュニケーションが困難になる

エコラリアが日常生活で頻繁に現れると、他者との対話がスムーズに進まないことがあります。
特に、子どもが繰り返すフレーズがその場の文脈に合わない場合、相手との会話が途切れてしまうことがあります。これにより、他者との意思疎通が難しくなり、クラスメイトや友人とのコミュニケーションが困難になることがあります。

2. 人間関係を作ることが難しくなる

エコラリアが続くと、子どもが他者との人間関係を築くのが難しくなることがあります。
特に、友人やクラスメイトにエコラリアへの知識・理解がない場合、コミュニケーション上での困難が生じ、子どもがクラスやグループで孤立してしまう可能性があります。

3. ネガティブな印象を持たれる可能性がある

エコラリアが原因で、周囲の人々が誤解や偏見を持つことがあります。
特に、エコラリアの背景にある「自閉症スペクトラムの特性」が理解されていない場合、子どもが「変わっている子」などと見られてしまうことがあります。
これにより、周囲から不当な扱いを受けたり、孤立してしまう可能性があります。

4. 学習の進捗が遅れる可能性がある

エコラリアが学習の場で頻繁に現れると、集中力が続かなかったり、先生やクラスメイトとの意思疎通がうまくいかないことがあります。
この結果、授業の内容を理解するのが難しくなり、学習の進捗が遅れることがあります。また、他の生徒との協力が必要な場面(グループ活動や集団行動など)でも、エコラリアが原因で支障をきたすことがあります。

自閉症の子が行うオウム返し(エコラリア)への7つの対処法

エコラリアへの適切な対処法を理解し、実践することで、自閉症スペクトラムの子どもたちのコミュニケーション能力を向上させ、日常生活での困難を軽減することができます。
以下に、エコラリアへの対処法として考えられる⑦つのアプローチをご紹介します。

1. 言葉の意味を教える

エコラリアは、子どもが言葉の音やリズムを学び、理解するための重要な手段の一つです。
例えば、子どもが特定の言葉を繰り返し言う場合、その言葉がどのような場面で使われるかをその都度丁寧に教えてあげることが大切です。
これは、言葉の意味を説明するだけでなく、適切な文脈でその言葉を使用する練習をさせることも含まれています。これにより、子どもは言葉の背後にある意味を理解し、適切に使用できるようになります。
また、新しいフレーズを学び、それを実際の会話の中で使ってみることも、コミュニケーションスキルを自然に上達させる上で有効です。

2. 代わりになる言葉を提案する

エコラリアが繰り返される場合、それが特定の状況や感情に結びついていることが多いです。
このような場合、同じ意味を持つ他の言葉やフレーズを教え、その言葉を使ってみるように促すことも有効です。
例えば、子どもが「これ、これ、これ」と繰り返す場合、「これがほしい、の?」と代替表現を提案することで、多様なコミュニケーション方法を身につけさせることができます。
代替表現を学ぶことで、子どもは状況に合った言葉を使い分けるようになっていきます。また、特定の単語やフレーズに固執せず、柔軟にコミュニケーションできる能力を育てることができます。

3. 背景にある意味や意図を理解する

エコラリアには、表面的には理解しにくい深い意味が込められていることがあります。
例えば、子どもが繰り返し同じフレーズを言う場合、そのフレーズが子どもにとって安心感をもたらすものであったり、過去の体験と結びついているものである可能性があります。
このような場合、エコラリアを単なるオウム返しとして捉えるのではなく、その背景にある意味や意図を理解しようとすることが大切です。
エコラリアの意味を理解することで、「子どもが何を求めているのか?」「どのように感じているのか?」を理解し、適切な対応を取ることができます。

4. 反復の頻度やタイミングを観察する

エコラリアがどのような状況で発生しやすいのかを観察し、その頻度やタイミングを記録しておくことは、エコラリアへの効果的な対処法を見つけるために役立ちます。
例えば、特定の場所や時間、特定の人と接する際にエコラリアが頻繁に起こる場合、その状況がトリガー(引き金)となっている可能性があります。このようなトリガーを特定することで、例えば、ストレスがかかりやすい状況を避けたり、安心できる環境を提供するなど、環境を事前に調整し、エコラリアの発生を減少させることができます。
また、子どもの気持ちを落ち着かせるためのリラックス法やルーチンを見つけ、そのような場面に遭遇したら実践することも有効です。

5. 視覚的なサポートを活用する

エコラリアを減少させる一つの方法として、視覚的なサポートを提供することも効果的です。
具体的な視覚的サポートとしては、イラスト入りのカードやスケジュール図で書かれた説明などがあります。これらの方法を適切に使うことで、子どもは言葉の意味を視覚的に理解しやすくなり、エコラリアに頼らずに意思を伝える方法を学ぶことができます。
このような視覚的サポートは、言語理解が難しい子どもにとっても有効であり、エコラリアの必要性を減少させる手助けになります。

6. 遊びやアクティビティを通じた学習を提供する

遊びやアクティビティは、子どもが自然な形で言葉やコミュニケーションスキルを学ぶ絶好の機会です。
エコラリアが発生する場面をよく観察し、その場面に合った遊びやアクティビティを通じて学習を促すことも有効です。
例えば、「ごっこ遊び」を通じて、実生活での会話を練習する機会を提供したり、「歌やリズム遊び」の中で、言葉のリズムや抑揚を学ぶことができ、楽しく自然に言語スキルを発達させることができます。
これらの方法は、学習を楽しみながら行うことができ、エコラリアに頼らない新しいコミュニケーション方法を身につけるための手助けになります。

7. 専門家の支援を受ける

エコラリアに対して適切な対応を行うためには、専門家の支援を受けることが不可欠です。
言語療法士や発達障害支援の専門家は、エコラリアがどのように発生しているかを評価し、子どもに適した対応方法を提案してくれます。
言語療法士は、子どもがより効果的にコミュニケーションを取れるように、具体的な練習方法などを指導してくれます。また、発達支援の専門家は、エコラリアの背景にある心理的な要因や発達上の課題を理解した上で、それに応じたサポート方法を指導してくれます。
専門家の助けを借りることで、子どもの個々に応じた最適な対応方法が明確となり、エコラリアを減少させるための手助けとなります。

自閉症の子が行うオウム返し(エコラリア)と発達の関連性

エコラリアは自閉症スペクトラムの子どもたちにとって、発達の過程で重要な役割を果たす行動です。
エコラリアは単なる言葉の反復ではなく、発達段階に応じてさまざまな意味や目的を持ちます。以下では、エコラリアが子どもの発達の各段階でどのように現れ、変化していくのかを解説します。

1. 幼少期(0〜3歳)

幼少期、特に0〜3歳の間にエコラリアが現れることは、言語発達の初期段階として一般的です。
この時期の子どもは、言葉の音やリズムに興味を持ち、他者が話す言葉を即時に繰り返すことで、言語の基本的な構造を学びます。このような即時エコラリアは、子どもが言葉の音や発音を学習し、言語スキルを構築するための自然なプロセスの一部とされています。
この時期にエコラリアが見られることは、発達上の正常な範囲内であり、言語理解の一歩として重要です。

2. 幼児期から学童期(3〜7歳)

幼児期から学童期にかけて(3〜7歳)、エコラリアの性質が変わっていきます。
この時期になると、子どもたちは言語を通じたコミュニケーションの意識が芽生える為、エコラリアは、単なる音の繰り返しから、コミュニケーションの意図を持った行動へと進化します。
例えば、他者の言葉を繰り返すことで会話に参加しようとしたり、特定の状況で使われるフレーズを覚えて、それを適切な場面で使用することがあります。また、過去に聞いたフレーズを後になって繰り返す「遅延エコラリア」もこの時期に増加し、子どもが言語を記憶し、さまざまな状況で活用しようとする努力の一環として現れます。

3. 学童期以降(7歳以上)

学童期以降(7歳以上)になると、エコラリアはさらに発展し、特定の状況や目的に応じたものとして現れることが増えます。この時期になると、多くの子どもたちは言語スキルが向上し、エコラリアの頻度が減少する傾向があります。
ただし、自閉症スペクトラムの子どもの場合は、ストレスや不安がある状況下で発生することがあります。このような場合、エコラリアは自己刺激行動や自己安定化の手段、特定の情報を記憶し、整理するための手段として行われています。

4. 思春期から成人期

思春期から成人期にかけて、エコラリアの頻度はさらに減少しますが、依然として特定の状況で見られることがあります。特に、ストレスや変化が多い状況下では、エコラリアが顕著になることがあります。
この時期のエコラリアは、より複雑な言葉やフレーズを使用することが多く、感情や考えを表現するための手段として使われます。また、特定の状況下において、自己調整のためにエコラリアを使用することがあり、その場合はストレスや不安を軽減するために行われます。

まとめ

自閉症の子が行うオウム返し(エコラリア)は、自閉症スペクトラムの子どもたちにとって、発達の一部として大切な役割を果たす行動です。年齢や発達の段階に応じてその形や目的が変わり、言葉を学び、コミュニケーションを育む手助けとなります。
エコラリアの意味を理解し、適切にサポートすることで、子どもたちはよりスムーズに周囲と関わることができるようになります。この理解とサポートが、社会での自立や豊かな人間関係を築くための力になるでしょう。

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