WISCで処理速度(PSI)だけ低い子どもの特徴とサポート方法

公開日:2024年10月30日

このコラムでは、WISCで処理速度(PSI)が低い子どもの特徴と学校や日常でのよくある困りごとについて詳しく解説します。また、処理速度が低い子どもへの効果的なサポート方法についてもご紹介します。お子さんへの接し方でお悩みの方はぜひご一読下さい。

処理速度(PSI)について

処理速度(PSI)は、WISCの指標の一つで、情報を素早く処理し、反応する力を測定するものです。
この能力は、学習や日常生活における作業効率に直結しています。特に、他の認知能力が平均以上であるが処理速度が低い場合、その子どもにとってどのような影響があるのか、そしてどのようにサポートすべきかを理解する必要があります。

処理速度(PSI)とは何か?

処理速度(PSI)は、WISCで測定される指標の一つで、主に視覚的な情報を素早く認識し、理解した情報を基にスムーズに手や体を動かす力を示しています。
具体的には、子どもが新しい情報をどれだけ速く処理し、課題に対してどれだけ迅速に対応できるかを測るものです。例えば、図形やパターンを見て、それに基づいた行動をする能力が含まれます。
この力は、勉強や日常生活においても重要で、効率的な学習やタスクの遂行を支える役割を果たしています。

参照 : 国立大学法人山口大学「自閉症スペクトラム障害へのWISC-Ⅳの臨床的活用」

ワーキングメモリー(WMI)との違い

ワーキングメモリー(WMI)と処理速度(PSI)は混同されがちですが、それぞれ異なる役割を持っています。
「ワーキングメモリー」は、情報を短期間保持し、必要な時にそれを取り出して活用する力です。例えば、数学の問題を解く際に必要な計算手順や、長文を読むときに文章の前後関係を把握する力が該当します。
一方、「処理速度」は、ワーキングメモリーと連携しながらも、主に情報の認知と応答の速さに関わっています。したがって、処理速度が低い場合、情報の保持や理解ができていても、素早く反応することが難しくなります。

処理速度が低い子どもの特徴

処理速度が低い子どもは、主に以下のような特徴が見られることが多いです。
これらの特徴は、他の子どもと比較されやすく、場合によっては「ゆっくりしている」や「やる気がない」と誤解されることもあるため、特性を理解し、適切なサポートを行うことが重要となります。

課題に時間がかかる

処理速度が低い場合、問題を理解し、解答を導き出すまでに他の子どもよりも時間がかかることがあります。特にテストや作業の時間制限があると、焦りやストレスを感じやすくなります。

反応がゆっくり

処理速度が低い場合、指示自体を理解していても、その指示に従った行動が周りから遅れてしまうことがあります。
また、指示が複数ある場合、一度に対応するのが難しくなることもあります。

書くスピードが遅い

処理速度が低いと、文字や図形を書く速度が遅くなることがあり、授業中にノートをとることや、テストでの記述問題に苦戦することがあります。

ミスが多くなる

処理速度が低いと、急いで作業を終わらせようとする際、間違いや見落としが生じやすくなるため、ミスが増えることがあります。

処理速度が低い子の学校生活でよくある困りごと

処理速度が低い子どもは、学習や生活の場面で特有の困難に直面しやすいです。
これらの困難は、単なる「遅れ」ではなく、子どもが持つ特性に基づくものです。以下では、学校生活でよく見られる困りごとを挙げ、それぞれについて詳しく解説します。

1. 授業中の板書が間に合わない

処理速度が低い子どもは、授業中に先生が黒板に書く内容をノートに写すスピードが遅れることが多く、板書が終わらないうちに次の話題に移ってしまうケースがよくあります。
この状況が繰り返されると、大切な情報がノートに残せず、学習内容の理解が遅れる原因になります。

2. テストでの時間切れが頻発する

処理速度が低い子どもは、テスト中に問題を解くのが間に合わず、時間切れになってしまうことが少なくありません。
問題の内容は理解できていても、解答を素早く出すことが難しいため、全ての問題に取り組む時間が足りなくなり、テストで実力を出し切れない場合があります。

3. 宿題・提出物の期限に間に合わない

処理速度が低いと、学校からの宿題や提出物も、取り組むスピードが遅いために提出期限に間に合わなくなることがあります。
特に、複数の課題を同時にこなす必要がある場合、全体を効率よく進めることが難しく、期限を守るプレッシャーがストレスになってしまうこともあります。

4. 複雑な動作が必要な活動で遅れがちになる

処理速度の遅さは、運動や手先の器用さが求められる活動にも影響を及ぼします。体育での素早い動きや、技術・家庭での細かい手作業など、連続して動作をこなす場面で遅れが目立ち、周囲と比べて進行が遅くなるため、本人が苦手意識を持ちやすくなります。

5. 周囲と比較して自信を失ってしまう

周りの子どもが素早く課題を終わらせたり、難なくこなしているのを見ると、処理速度が遅い子どもは自分に対する自信を失うことが多いです。
「自分だけできない…」という思いが募り、やる気や自己肯定感が下がってしまうことが懸念されます。これは、勉強や他の活動に対するモチベーションの低下にもつながりやすいため、注意が必要です。

処理速度が低い子の日常生活でよくある困りごと

処理速度が低い子どもは、日常生活でもいくつかの困難に直面しやすいです。
これらの困難は、子どもの自己肯定感や生活リズムにも影響を及ぼすことがあるため、理解して支援することが大切です。以下に、日常生活でよくある困りごとを挙げ、それぞれについて詳しく解説します。

1. 着替えや準備に時間がかかり、遅刻してしまう

処理速度が低いと、朝の準備や着替えに時間がかかることが多く、通学や外出の時間に遅れてしまうことがあります。
着替えや準備の手順を把握していても、一つひとつの動作に時間がかかり、焦りやすくなるのも特徴です。このため、朝の時間が慌ただしくなり、家族も同時に慌ただしくなってしまうことがあります。

2. 時間がかかる宿題・課題に抵抗がある

処理速度が低い子どもは、長時間かかる宿題や課題に取り組む際、どうしても抵抗感を抱きやすくなります。
処理速度が遅いため、一つの課題を終わらせるまでに時間がかかり、完了するまでの長さに対して不安やいらだちを感じることが少なくありません。これにより、宿題や課題に対して消極的になり、後回しにしてしまうことが多くなります。

3. 集中し続けることが難しく、行動が途切れがちになってしまう

日常生活においても、処理速度が低い子どもは長時間集中し続けることが難しく、行動が途切れてしまうことがよくあります。
例えば、部屋の片付けや掃除など、集中して行う作業においては、途中で手を止めてしまったり、別のことに意識が向いてしまうことが多くなります。こうしたことを繰り返すと、本人が「集中できない」「自分には難しい」と感じてしまい、さらに苦手意識が強まる傾向があります。

処理速度が低い子への効果的な5つのサポート方法

処理速度が低い子どもが安心して学べるよう、家庭や学校でのサポートが重要です。
以下では、子どもが自分のペースで成長できるように、具体的なサポート方法を解説します。

1. 自己肯定感が下がらない言葉掛けをする

まず、子どもが自己肯定感を維持できるような言葉掛けを心がけましょう。
例えば、「ゆっくりやればいいよ!」「あなたのペースで大丈夫だから」というように、急がせない言葉を使いましょう。
また、達成感を味わわせる機会を意識的に作り、成功体験を積み重ねていくことで、子どもの自信を育みます。この様なサポートは、学習や生活面でのポジティブな態度につながります。

2. 時間を意識する習慣をつける

処理速度が遅い子どもにとって、時間を意識する習慣を身につけることが役立ちます。
視覚的に時間を確認できるタイマーを使ったりして、特定の作業にかかる時間を可視化しましょう。
これにより、時間の感覚を少しずつ身につけることができ、次第に自分のペースに合った目標設定ができるようになります。

3. あらかじめ授業の予習をしておく

授業での負担を軽減するために、あらかじめ予習をしておくと効果的です。
予習することで授業中の理解が深まり、板書や課題に対する準備が整います。家庭で予習をサポートする際は、教科書の内容を確認するだけでなく、簡単な質問を通じて大まかな内容を理解できるようにサポートしましょう。

4. 学校に情報を共有し、合理的配慮を求める

子どもの処理速度の特徴や必要なサポート方法について学校と共有し、合理的な配慮を依頼することも大切です。
例えば、課題が難しい場合は提出期限の延長をお願いしたり、ノートを取る際にサポートを受けるなどにより、子どもが安心して学べる環境を整えることができます。
先生やスクールカウンセラーとの連携を深め、子どもにとって最適なサポート体制を整えましょう。

5. 家庭教師などの学習サポートを検討する

もし学校でのサポートだけでは不十分な場合、家庭教師や学習塾などの学習サポートを活用することも検討してみましょう。家庭教師であれば、個別のペースで学習できるため、処理速度に応じた指導が受けられます。また、学習の進捗を家庭教師と共に確認しながら、苦手な分野を補強することで、学校での学びもより効果的にサポートすることができます。

まとめ

WISC-IV検査で「処理速度」(PSI)だけが低いという結果が出た場合、その子どもには、本人にしかわからない独特の課題が生じることがあります。処理速度が低い子どもは、情報を素早く理解したり判断したりするのが苦手ですが、他の認知能力が高いこともよくあります。そのため、子どもの特性を正しく理解し、適切な支援を行うことが重要です。
周囲の大人が協力し、子どものペースに合わせた支援を提供することで、本人の成長をサポートし、持っている可能性を最大限に引き出すことができるでしょう。

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