自閉症の子の言葉が出ない理由とは?|サポート方法なども詳しく解説
公開日:2024年12月23日
このコラムでは、自閉症のお子さんの言葉が出ない理由について解説します。また、言葉が出にくい自閉症の子どもへのサポート方法や、親が避けるべき対応についても詳しくご紹介します。
お子さんのコミュニケーションについて不安を抱えている方はぜひご一読ください。
自閉スペクトラム症の子の5つの特徴
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、周囲と異なる行動や考え方を持つことがあり、その特性を理解することが大切です。
ここでは、よく見られる5つの特徴について説明します。
1. コミュニケーションが苦手
自閉症の子どもは、言葉や身振りを使ったコミュニケーションが難しい場合があります。
相手の言葉の裏にある意図や感情を理解するのが苦手で、会話が一方通行になりがちです。また、必要以上に言葉を繰り返すオウム返し(エコラリア)が見られることもあります。
さらに、表情や視線といった非言語的な手段で気持ちを感じとることが難しく、周囲の人が「どうして伝わらないのか?」と感じることも少なくありません。
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⇒ 「発達障害の子どもが行う「オウム返し(エコラリア)」とは?」
2. 集団行動やグループ学習が苦手
集団での活動やグループ学習は、ルールや役割分担、他人との協力が求められるため、自閉症の子どもにとって負担が大きい場合があります。
他の子どもたちが自然にできることでも、ASDの子どもには「何をすればよいのか」がわかりにくく感じられることがあります。
また、集団の中にいると刺激が多く、ストレスを感じる子どもも多いです。そうした環境では、自分のペースを守ることが難しくなり、不安や混乱が増すことがあります。
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⇒ 「集団行動が苦手な子どもについて|心理的背景や効果的な対応方法とは?」
3. こだわりが強い
自閉症の子どもは、特定のルーチンや物事の順序にこだわりを持つことがあります。
例えば、毎日同じ道を通る、特定のおもちゃだけで遊ぶといった行動が挙げられます。これらのこだわりは、本人にとって安心感を得るための手段と考えられます。
一方で、予期せぬ変更や計画の変更があると、強い不安やパニックを引き起こすことがあります。このような特性は、家庭や学校での日常生活に影響を及ぼす場合があります。
4. 特定の感覚に過敏に反応する
自閉症の子どもには、音、光、匂い、触覚などに対して過敏に反応するケースがあります。
例えば、大きな音や蛍光灯の光が不快に感じられたり、特定の素材の服を着るのを嫌がったりすることがあります。
これらの感覚過敏は、子どもの学校生活などに影響を与えることがあり、本人が落ち着ける環境を見つけるのが難しい場合もあります。
5. 興味の範囲が限定的
自閉症の子どもは、特定の物事やテーマに対して強い関心を示す一方で、それ以外にはあまり興味を持たないことがあります。
例えば、電車、昆虫、数字といった特定の分野において、驚くほど豊富な知識を持っていることがあります。
このような特徴は、周囲から見ると「興味が偏っている」と感じられるかもしれません。しかし、本人にとってはそれが大切な自己表現の一部であり、その関心が彼らの個性を形作っています。むしろ、その「興味の偏り」を活かすことで、新たな活躍の場が広がることも少なくありません。
【自閉スペクトラム症】言葉が出ない5つの理由
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが言葉を発するのが難しい理由は多岐にわたります。その背景には、言語の発達の遅れだけでなく、さまざまな要因が絡み合っています。
ここでは、その主な理由を6つに分けて詳しく説明します。
1. コミュニケーションへの意欲が低い
自閉スペクトラム症の子どもは、他者と積極的にコミュニケーションを取りたいという意欲が低いことがあります。
他者とのやり取りに興味を感じにくかったり、他人と関わること自体がストレスや不安を引き起こす場合があるためです。また、自分の興味のあるものや内面的な世界に没頭しやすい特性を持つため、他者との会話が優先されにくい傾向があります。
さらに、言葉以外の手段でニーズが満たされている環境にいると、発語の機会がさらに減少します。たとえば、親や教師が子どもの行動や視線から何を求めているのかを察してすぐに対応してしまうと、本人が言葉で伝える必要性を感じなくなることがあります。
2. 言語発達の遅れ
自閉症の子どもには、言語の発達そのものが遅れることがよくあります。
この遅れは、単語を学習し記憶する力や文法を理解して組み合わせる能力が未熟なことによって引き起こされます。
また、言葉を聞き取ってその音の違いを認識する力が弱い場合もあり、それが原因で発語が遅れることもあります。
言語の発達には模倣が重要な役割を果たしますが、自閉症の子どもはこの模倣行動が少ない場合が多く、自然な会話を学ぶ機会が不足することがあります。結果として、言葉を使った表現の練習が不足し、発語がさらに遅れることにつながるのです。
3. 他人の感情を読み取ることが苦手
自閉症の子どもは、他者の表情や声のトーン、体の動きなど、感情を示す非言語的なヒントを理解するのが難しい場合があります。
そのため、相手の気持ちや意図を読み取ることができず、適切な言葉を選んで会話を続けることが難しくなるのです。
例えば、相手が悲しい表情をしていても、相手の感情に気づかない場合があります。また、声のトーンが喜びや怒りを表していることを認識できず、相手の感情に応じた反応を取れないこともあります。
こうした特性は、自然なコミュニケーションを難しくし、言葉を発する意欲の低下につながることがあります。
4. 語彙力に偏りがある
自閉症の子どもは、語彙力に大きな偏りが見られることがあります。
例えば、特定の興味分野に関する言葉には非常に詳しい一方で、日常的な会話に必要な語彙が不足している場合があります。電車や恐竜の名前には詳しくても、「お腹が空いた」「疲れた」といった基本的な感覚を表す言葉を使えないことも少なくありません。
このような語彙の偏りは、自閉症の子どもが特定の対象に強い興味を示す特性によるものです。
その結果、日常的なコミュニケーションで必要とされる語彙の習得が後回しになり、言葉が出なくなる傾向があります。
5. 感覚過敏や感覚遮断の影響
自閉症の子どもは、音や光、触覚などの感覚に対して過敏であったり、逆に鈍感であったりすることがあります。
このような感覚特性は、言葉を発することに直接影響を与えることがあります。
例えば、音に対して過敏である場合、周囲の雑音や話し声が不快に感じられ、言葉を発することに集中できなくなります。
一方で、感覚遮断がある場合、自分の声や周囲の音がどのように聞こえているのかを正確に認識できず、言葉を発すること自体が難しくなる場合があります。
これらの感覚特性は、子どもにとって非常に大きなストレスとなり、言語能力の発達を妨げる要因の一つとなります。
【自閉スペクトラム症】言葉が出るようにする5つの工夫
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが言葉を話すようになるためには、日常生活における工夫やサポートが大切です。子どもの特性を理解し、無理なく言葉を引き出せる環境を整えることで、言語発達を促すことができます。
ここでは、具体的な工夫を5つご紹介します。
1. 視覚的サポートを活用する
自閉症の子どもは、視覚的な情報を使うと物事を理解しやすい傾向があります。そのため、言葉だけでなく、絵が描かれたカードを活用すると、内容をより深く理解しやすくなります。
例えば、食べ物や遊び道具、日常生活の場面を描いたカードを用い、子どもに選ばせることで、「これが欲しい」や「あれがしたい」といった意思を言葉で伝えるきっかけを作れます。
また、その日の予定や日常のルーチン(鍵を閉める、手を洗うなど)を、大きなホワイトボードなどに視覚的に示し家庭内で共有すると、子どもが安心して予定や行動を理解できるようになります。
このような環境が整うことで、子どもに言葉を発する余裕が生まれることがあります。
2. 楽しい体験を通じて自然に言葉を引き出す
子どもが楽しいと感じる体験を通じて、言葉を自然に引き出すことも有効です。
例えば、子どもが好きな遊びや活動を一緒に楽しみながら、簡単な言葉を繰り返し使ってみましょう。ボール遊びをしながら「投げて」「取って」と言葉を伝える、絵本を一緒に読みながらキャラクターの名前や動作を口にするなど、遊びや日常の中で言葉を取り入れる工夫がポイントです。
楽しい環境の中では、子どもは安心して新しいことに挑戦する意欲が湧きます。言葉を使う体験が楽しいものであれば、「もっと話したい」という意欲が高まるでしょう。
3. 模倣を活用する(エコラリアやオウム返し)
自閉症の子どもは、他者の言葉をそのまま繰り返す「エコラリア」や「オウム返し」をすることがあります。
これをただの反復と捉えず、模倣を通じた言語学習のステップと考えることが重要です。
例えば、子どもがオウム返しをした場合、それに関連する新しい言葉を追加して伝えることで、会話を発展させることができます。
また、大人が子どもの言葉をあえて真似する「逆模倣」も効果的です。
子どもが発する言葉に対して同じ表現で応じることで、「言葉が通じる」という感覚を育むことができます。これにより、子どもが自分の言葉で表現する楽しさを実感できるようになります。
オウム返し(エコラリア)についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「発達障害の子どもが行う「オウム返し(エコラリア)」とは?」
4. 音やリズムを取り入れる
音楽やリズムを取り入れることも、言葉を引き出すための効果的な方法です。
自閉症の子どもは、メロディーやリズムに対して強い反応を示すことが多く、歌や手遊びを通じて自然と言葉を使う機会が生まれます。
例えば、子どもが好きな童謡を一緒に歌いながら、歌詞の中に日常的な言葉を盛り込むと、言葉を覚えやすくなります。
さらに、リズムに合わせて手を叩いたり、身体を動かしたりすることで、言葉と動作が結びつき、記憶に残りやすくなります。特に「おいで」「ジャンプ」など簡単な動詞を取り入れたリズミカルな遊びは、言葉の促進に効果的です。
5. 子供が興味を持つ言葉からスタートする
自閉症の子どもは、自分が興味を持つ対象に強く集中する特性を持っています。そのため、言葉を引き出す際は、子どもが関心を示しているものに関連した言葉から始めるのが効果的です。
例えば、電車が好きな子どもには、電車の名前や「発車」「到着」といった関連する言葉を使い、少しずつ語彙を広げていくと効果的です。
興味を持つ対象に関連する言葉は、子どもにとって自然と覚えやすいものです。さらに、その言葉を日常生活に結びつけることで、実際の会話で使える機会を増やすことができます。
子どもが好きなものを活用することで、「話したい」という意欲を引き出せるでしょう。
【自閉スペクトラム症】言葉が出ない子に親がやってはいけない5つのNG行動
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが言葉を話せない、または話しづらい状況に直面したとき、親としてどのように接するかは非常に重要です。
サポートのつもりで行った行動が、子どもの成長に悪影響を与えてしまうこともあります。ここでは、やってはいけない5つの行動について詳しく説明します。
1. 無理矢理話させようとする
子どもが言葉を出せないときに、無理矢理話させようとするのはNGです。
親が「ちゃんと話しなさい」や「今すぐ答えて」と強要することで、子どもはさらにストレスを感じ、言葉を話すこと自体を怖がるようになることがあります。
言葉が出ない背景には、不安や緊張、感覚の特性が関係している場合が多いため、無理に話させることは逆効果です。
子どもが自分のペースで表現できる環境を整えることが大切であり、待つことも親の重要な役割です。焦らず、子どもがリラックスできる雰囲気を作ることがポイントです。
2. 他の子どもと比較する
「同じ年齢の子はもっと話しているのに」や「お兄ちゃんのときはこんなことなかった」など、他の子どもと比較する発言は、子どもの自尊心を傷つける原因となります。
特に、自閉症の子どもは、自分が周囲と違うことに敏感で、比較されることで「自分はダメなんだ」と感じることがあります。
言葉の発達には個人差があり、自閉症の子どもも少しずつ着実に成長していきます。他の子どもと比較するのではなく、本人の小さな進歩や努力に目を向け、それを認めて褒めることが大切です。このような積み重ねが、子どもの自信や意欲につながります。
3. 言葉が出てこないことを叱る
子どもが言葉を話せない、もしくは、適切に表現できないことに対して叱るのは絶対に避けるべきです。
言葉が出ない理由は、子どもが意図的に話さないわけではなく、何らかの特性や困難さが背景にあります。そのため、叱られることで「話すことは怖いこと」「自分はできない子」と感じ、ますます言葉から遠ざかる可能性があります。
叱る代わりに、言葉を使うためのきっかけを作り、子どもが少しでも表現しようとしたときは、それをしっかり受け止めてあげることが重要です。
4. 子どもの話を聞き流す
子どもが話そうとしたときに、親がそれを聞き流す態度を取るのも問題です。
たとえ簡単な一言や不明瞭な発音であっても、それは子どもにとって大きな努力の結果であることが多いです。親がその努力を軽視すると、子どもは「話しても意味がない」と感じ、言葉を発する意欲を失うことがあります。
親は、子どもが発した言葉にしっかりと耳を傾け、受け止めることが大切です。「聞いているよ」という姿勢を示すことで、子どもは安心してさらに話そうとする気持ちを持てるようになります。
5. 過度な手助けをする
子どもが言葉で表現する前に、親が先回りして手助けをしすぎるのもNGです。
例えば、子どもが何かを欲しがっているときに、子どもの欲しいものを察して、言葉を待たずに対応してしまうと、子どもは言葉を使わなくても要求が通ると認識してしまいます。
子どものペースを尊重しつつ、必要最低限の手助けにとどめ、子どもが自ら言葉で伝えようとする機会を増やすことが大切です。
親が「言葉を使わなくても良い環境」を作ってしまうと、言語発達がさらに遅れる可能性があります。
まとめ
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが言葉を発するには、安心できる環境と親の丁寧なサポートが欠かせません。
無理に話させたり、否定的な反応を示したりするのではなく、子どものペースを尊重し、小さな成長を温かく見守ることが大切です。焦らず寄り添いながら、子どもの「話したい」という意欲を育み、共に成長を楽しむ姿勢を大切にしましょう。
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