内申点とは何だろう?|基礎から学ぶ内申点の知識
公開日:2024年5月10日
「内申点って何だろう?」そんな疑問を持つ中学生や保護者の方に、「内申点」について基礎からわかりやすく解説します。内申点の仕組み、算出方法、合否に与える影響、内申点を上げるための対策などをまとめて解説します!
内申点の基礎知識
内申点とは?
内申点の役割
内申点とは、受験する高校に提出される調査書(内申書とも呼ばれています)に記載されている「評定」のことです。この評定は、通知表の成績のように全9科目5段階評価で記載されています。
内申点は、高校受験の際の合否判定の材料になります。一般的な公立高校受験では、学力試験の点数と内申点を合計した点数によって合格・不合格が決まります。私立高校の一般入試を除くほとんどの高校受験で、この「内申点」が合否に大きく関係しています。
地域によって異なる計算方式
内申点の計算方法は地域によって大きく異なります。
例えば、中学1〜3年生までの成績を全て対象にする地域もあれば、中学3年生の成績のみを対象にする地域もあります。
また、中学3年生の成績のみを二倍で計算する地域もあれば、技能4科目の成績を二倍で計算する地域もあります。
内申点の算出方法については、各都道府県の教育委員会で公表されています。
内申点に影響するその他の要素
一般的に、内申点は9科目の評定点のことを指しますが、地域によっては調査書に記載されている「特別活動の記録」を点数化し、内申点に加えることがあります。
特別活動の記録とは、生徒会活動や部活動の実績、英検や漢検などの資格などがあります。これらは、点数化されなくとも一定の評価対象になるのですが、学力試験や内申点の評定と比べると、その配点比率は非常に少なく、受験においてはあまり合否に影響しません。
また、一部の地域の推薦入試などでは、評定ではなく観点別評価(ABCの3段階評価)を数値化し内申点とすることもあり、特定の科目や観点の配点を高くする(傾斜配点)こともあります。(※観点別評価については後述します。)
厳密に言うと、内申点の計算方法は学校ごとに異なる可能性がありますので、正確な情報については各学校のホームページや教育委員会のホームページで確認しましょう。
調査書(内申書)についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「調査書(内申書)について徹底解説!|高校受験に向けて正しく理解しましょう!」
内申点と通知表の関係性
内申点はどうやってつける?
内申点は、各学年時の各科目の先生が通知表の評定を基につけています。
内申点は、学期ごとの評定をつける通知表と異なり、1年間を通した評定をつけるので、1〜3学期の通知表の評定の平均値が目安になります。(もしくは、学年末の評定に近い数値とも言えます。)
いずれにせよ、内申点は通知表の成績とほぼ直結しています。例えば、「通知表では3だったが、内申点では5になる」といったことはありません。
調査書(内申点)は本人や保護者には非公表となるので、厳密に言うと自分の内申点を正確に知ることはできないのですが、通知表の成績から自分の内申点をある程度推測することができるということになります。(内申点の算出方法は後述します)
通知表の評価方法
では、内申点の基になっている「通知表の評定」はどのように決まるのでしょうか?
この点については、2020年度から導入されている「観点別評価」という評価方法が基準となっています。
観点別評価とは、「知識・技能」「 思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点から総合的に判断し、評定点を決める方法です。
大まかに言うと、
知識・技能 | ・定期テストや小テストの成績 |
---|---|
思考・判断・表現 | ・記述問題や表やグラフの読み取る問題の成績や内容 ・ノートやレポートなどの内容 ・作文や小論文の成績や内容 |
主体的に学習に 取り組む態度 | ・ノート、レポート、ワークなどの提出状況や内容 ・授業態度(発表、発言、取り組み方) ・学習に取り組む姿勢 |
などが、評価の基準とされています。
通知表の評定を決める際には、これら3つの観点をバランス良く評価するのですが、実際の所はテストの点数(知識・技能)が最も大きく影響しています。
ただし、テストで100点を取ったとしても、提出物は全く出さない、授業態度が著しく悪い等であった場合は、5を取れない可能性が高くなります。かと言って、提出物や授業態度をパーフェクトにこなしていたとしても、テストの点数が悪ければ5をもらうことができません。
つまり、通知表で良い成績を取るには、上記の観点がバランス良く3拍子そろっていることが求められます。
参照:文部科学省「新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について」
高校受験における内申点の影響
高校受験の合否において、内申点の与える影響は強弱があります。これは、総合点に対して内申点の占める割合(配点比率)が異なるからです。
高校受験には、大きく分けて「一般入試」と「推薦入試」の2種類の受験方法があります。また、公立受験と私立受験の2パターンに分かれます。
それぞれにおいて内申点の影響度が異なるので、下記で概要を解説します。
一般入試
[公立高校]
公立高校の一般入試では、総合点の20%〜40%程度が内申点による点数になります。受験する高校によってその比率は異なるため、事前に確認する必要があります。
一般入試では必ず学力テストが実施されますが、テストを受ける前に内申点による点差が生じているということになります。つまり、自分の内申点が高ければ高いほど有利になり、当日のテストも少しの失敗は許されるということになります。逆に、内申点が低ければ当日のテストでその分を挽回しなければならないので、合格の可能性は下がってしまいます。
[私立高校]
私立高校の一般入試(オープン入試)では、内申点はほとんど加味されません。つまり、当日の学力テストが一発勝負となります。
しかし、合格ラインギリギリの点数の人が複数いた場合、その差を判断するために内申点を判断材料にすることがありますので、全く無関係とは言えません。
推薦入試
[公立高校]
公立高校の推薦入試では、内申点と面接・小論文・作文のいずれかの試験の合計点により合否が決まります。(学校によっては、その他に適性検査などの試験が加わることもあります。)
推薦入試の場合、総合点の50%程度が内申点による点数となり、学力試験が行われない分、内申点の影響度が高くなっています。面接・小論文・作文は、余程の失敗がなければ大きく点差が開かないと言われており、「内申点が合否を分ける」と言っても過言ではありません。
[私立高校]
私立高校の推薦入試には、単願推薦や併願推薦などの制度があります。
単願推薦は、他の高校を受験せず、合格したら必ず進学することを約束することが条件となります。併願推薦は、主に公立高校との併願受験で利用される制度で、第一志望の公立高校が不合格であった場合は必ずその高校に進学することが条件となります。
いずれも、内申点と面接・小論文・作文のいずれかの試験の合計点により合否が決まり、内申点の占める割合は50%程度になります。公立高校の推薦入試と同様、「内申点が合否を分ける」と言っても過言ではありません。
高校の推薦入試についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「高校の推薦入試対策ガイド|ここだけは知っておきたいポイント」
内申点の重要性
上記からわかるように、高校受験の合否において内申点が大きく関わっており、学力テストと同程度の重要性と考えて良いでしょう。
内申点のメリットとしては、学力テストを受ける前にアドバンテージを作れることです。学力試験は一発勝負なので、思った以上に上手くいく場合もあれば、失敗をしてしまうこともあります。受けてみないと分からないといった不安定な側面があるので、そういった面では、内申点をしっかり確保していることが大きな安心材料となります。
逆に、デメリットとして考えられるのは、「1度ついてしまった成績は変えられない」点です。中学1年生の成績から内申点に反映される地域も多く、過去の成績が悪いことで、いざ受験となった時に足を引っ張ってしまうこともあります。
いずれにせよ、内申点がメリットになるのか、デメリットとなるのか、ということは、自分の学習姿勢によって変わるので、中学生になったら1年生から気を抜かず定期テストや提出物を真摯に取り組むことが大切です。
内申点の算出方法
次に、内申点の算出方法についてご説明します。前述したとおり、実際の内申書は公表されないので正確な数値というものは分かりません。ただ、以下の方法によって、過去の通知表からかなり近い数値を割り出すことができます。
STEP①|対象の学年を調べる
まず初めに、自分の住んでいる地域の受験制度(内申点の算出方法)を知る必要があります。
中学1年生から3年生までの成績が対象となっている場合は、中学1年生の通知表から全て用意してください。中学3年生の成績のみが対象となっている地域の場合は中学3年生の通知表だけで大丈夫です。
中学3年生の成績が途中までしか出ていない場合は、直近の成績を参考にしてください。
STEP②|自分の通知表を調べる
次に、各科目の評定(5段階評価の数値)の平均値を学年ごとに計算してみてください。小数点は四捨五入しましょう。学期ごとの成績に開きがあるようでしたら、学年末の評定を参考にしてみてください。学年末の評定は、1年間を通した評価をつけるようになっていますので、こちらの数値の方が適している場合もあります。
STEP③|自分の素点を知る
STEP② で算出した各学年各科目ごとの数値が、最終的な内申点のもとになる「素点」となります。
例えば、中学1年生の評定がオール3であった場合、3×9科目=27点が素点の合計値となります。この素点を対象となる学年ごとに9科目すべてを算出しましょう。
STEP④|地域の計算式に当てはめる
最後に、STEP③ で算出した素点を地域ごとの計算方法に当てはめ、最終的な内申点を算出します。
地域ごとの計算方法は、お住まいの教育委員会などで調べましょう。計算方法は地域によって大きく異なるので、間違った計算方法で算出してしまうと参考になりません。
よくある計算方法の例としては、
- 技能4科目の評定を2倍で計算する
- 中学3年生の評定を2倍で計算する
などがあります。
STEP④ で算出した数値の合計が、自分の内申点に近い数値となります。
この内申点が、高校受験の際に自分の調査書に記載されることになり、受験する高校に提出されます。
内申点の換算方法ついてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「内申点の換算方法を知ろう|内申点の仕組みと計算方法について」
実際の受験では、各高校ごとに内申点をどの程度重きを置くかが変わってきます。学力試験や面接試験などの配点と内申点の配点を合わせて、満点を設定するのですが、この配点比率が高校ごとに異なります。各高校ごとの配点比率は毎年公表されますので、志望校選定の際には必ずチェックしましょう。
関東7都県と関西6府県については、下記のページにて計算式を紹介していますので参考にしてみて下さい。
内申点の計算についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「内申点の計算方法|自分の点数をシミュレーションしてみよう!」
内申点を上げる方法
最後に内申点を上げる方法について解説します。
端的に言えば、通知表の評定を上げることで内申点も比例して上がることになります。つまり、「通知表の評定はどのように決まるのか?」を理解していれば、自ずとやるべきことが分かってきます。
通知表の成績を上げる!
内申点を上げるためには、通知表の評定を上げることが必要です。通知表の評定のつけ方は前述したとおり、「知識・技能」「 思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点の評価を上げていくことがポイントとなります。
それでは、具体的に何をしていけば良いのかを各観点ごとに下記で解説します。
「知識・技能」の対策
「知識・技能」の評価とは、端的に言うと、授業で習ったことを「しっかり覚えているか?(=知識)」と「理解ができているか?(=応用力、考える力)」ということです。
定期テストや小テストでは、「知識の習得を問う問題(暗記)」と「知識の概念的な理解を問う問題(考えて解く問題)」がありますが、それらを「バランス良く解答できているか?」という点がポイントとなります。
「知識・技能」の評価を上げるためには、暗記問題や単純な計算問題だけではなく、考えて解く応用問題や記述問題をしっかり解けるようにすることが大切です。定期テストで言えば、配点の高い大問を一問でも多く正解することが大切です。
ですから、暗記だけでテスト勉強を終わらせるのではなく、ワークや問題集の演習を繰り返し、解き方や問題のパターンを身につけるような勉強をしましょう。
例えば数学の文章問題などで、解き方自体は合っていたのに計算を間違えてしまった時などは、満点こそもらえませんが部分点がもらえます。この様な場合、知識・技能の観点では一定の評価がもらえるはずです。
しかしながら、テストで点数を取っていることが前提となる評価項目であることには変わりないので、そもそもテストの点数自体が悪ければ、「知識・技能」についても良い評価は得られません。
「思考・判断・表現」の対策
「思考・判断・表現」の評価とは、知識や技能を用いて物事を解決する思考力や判断力、自分の考えを言葉や文章で表現する力が身に付いているか?ということです。
この評価は、テストの記述問題やグラフ・表を読み取り考える問題などや、論述(作文や小論文)やレポートの作成、発表、グループや学級における話合い、技能教科での作品制作や表現など、多様な活動の中から総合的に判断されます。
「思考・判断・表現」の評価を上げるためには、定期テストのみならず、様々な学習活動において考える力や表現する力を発揮する必要があります。
例えば、
- 習得した知識や技能を使い、記述問題やグラフ・表を読み取る問題で適切な解答へと導くことができる。
- 答えが一つではない問題である論述(レポート、作文、小論文)において、自分の考えを明確に示し、論理的に説明することができる。
- 学校での話し合いや発表の場において、自分の考えを明確に示し、論理的に説明することができる。
- 技能4科目での作品制作や発表の場において、自分の知識や技能を表現することができる。
などが考えられます。
端的に言えば、自分の能力を活用して問題を解決したり表現したりする「応用力」が評価の対象となります。つまり、定期テストで良い点数が取れていれば、応用問題も解けているということになるので、そのまま評価の対象となります。ただし評価の対象が広いので、テストの点数に限らず、という点がポイントになります。
「主体的に学習に取り組む態度」の対策
「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、端的に言えば「授業態度」のことです。勉強や授業に取り組む姿勢や態度について評価する項目となります。
つまり、テストの点数が悪くても、学習に取り組む姿勢が良ければ評価の対象となります。
「主体的に学習に取り組む態度」の評価を上げるためには、ノートや提出物、授業中の発言や態度、学校生活における行動などにしっかり取り組むことが大切です。
例えば、
- 提出物や宿題は期限を守って提出する
- 提出物や宿題を丸写ししたりせず、真面目に取り組む
- 授業では、積極的に発言・発表をする
- 授業を受けることに集中し、居眠りなどをしない
- 分からないことがあれば積極的に質問し、学習意欲を示す
- 学校生活において規則正しい生活をおくる(非行、先生への反抗、校則を破る、遅刻などをしない)
が考えられます。
3観点のうち、この「主体的に学習に取り組む態度」については、定期テストの点数が悪い人でも評価を上げることができます。
逆に言えば、いくらテストの点数が良くても「主体的に学習に取り組む態度」が悪ければ、5を取ることは難しくなります。
それくらい、学校側は勉強に取り組む姿勢を重視しているということを理解しておきましょう。
その他の方法
内申点を上げるためには、上記3観点を中心とした通知表の評定が重要であることには変わりありませんが、その他の方法で内申点を上げることもできます。
ただし、評価を覆すほどのインパクトはないので、プラスアルファくらいで考えておいた方がよいです。
[英検・漢検などの資格]
一部の高校や学科などでは、英検や漢検などの資格を内申点に加点する、もしくは合否判定の判断材料とすることがあります。
特に英語を重視した高校や学科などでは、英検取得者を優遇することが多いのですが、多くの場合、英検準2級以上が対象となるので、そのハードルは低くありません。(英検準2級は高校生レベルになります。)
受験する高校の入試制度を調べ、英検取得者に対する優遇制度が設けられている場合には、取得を目指して勉強していくことが重要となります。
英検取得による優遇制度についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「高校受験で英検取得は有利になる!|内申点や加点の優遇措置について」
[部活動などの成績]
スポーツ推薦などでは、部活動の成績などが評価されます。これはスポーツに限らず、吹奏楽や美術などの文化活動でも対象になることがあります。特定の分野に力を入れている高校や学科などでは、このような受験制度を設けていることが多いのですが、評価の対象となる成績は全国大会レベルなので、そのハードルは低くありません。
内申点についてもっと知りたい方はこちら
⇒ 「内申点の上げ方を徹底解説!|志望校合格に向けた勝利への方程式」
まとめ
高校受験をする際によく耳にする「内申点」。
生徒本人や保護者には非公表となっているので、その内容がよく分からない方が多いと思います。詰まるところ、「内申点=通知表の総括」と考えておけば良いと思います。その上で、自分の内申点を算出し、志望校選定の判断材料にして下さい。
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