いじめの原因について|その理由や背景を考える
公開日:2024年6月21日
いじめに悩む小中学生は増加傾向にあり、後を絶ちません。
「どのような原因でいじめは起こるのか?」その理由や背景を探り、保護者の対応や支援に活かしましょう。また、いじめにあった時の相談窓口についてもご紹介します。
データから見るいじめの現状
文部科学省が公表した令和4年度のデータによると、小学生・中学生のいじめ発生件数は上昇傾向にあります。
特に注目すべきは、小学生のいじめが多いことです。小学生は年齢が幼いこともあり、他人の気持ちを理解することが難しいことなどが要因として考えられますが、一方で、小学生は中高生に比べて、いじめられたことを素直に大人に報告する傾向があり、これも発生件数が多く見える一因と考えられます。
いじめが起きる原因とは
いじめは、子どもたちの成長や学校生活に大きな影響を与える深刻な問題です。いじめが起きる原因は多岐にわたりますが、ここではその主な要因を「子ども同士の問題」「個人の特性や性格の問題」「学校の問題」「家庭の問題」の4つに分けて考えてみましょう。
1. 子ども同士の問題
子ども同士のトラブルがいじめの原因となることは少なくありません。例えば、仲間外れや悪口、無視などがその典型です。
子どもたちはまだ社会的スキルを学んでいる途中であり、自己表現やコミュニケーションの方法が未熟なため、衝突が起こりやすいのです。
仲間外れや悪口、無視をする
ちょっとした誤解やすれ違いから、子どもたちは簡単に仲間外れや無視といった行動を取ってしまうことがあります。これは、相手の気持ちを考える力がまだ十分に育っていないためです。
また、友達の輪に入りたい、注目を集めたいという欲求が強い子どもたちにとって、他者をいじめにより排除する行動を一種の防衛手段と考えていることがあります。
競争心や差異を強調する
友達関係の中で優位に立とうとする競争心や、他者との差異を強調しようとする欲求もいじめの原因となります。
学校や塾の成績や運動能力、外見など、あらゆる面での競争が子どもたちの間で起こり、それらがエスカレートしてしまうと、いじめに発展することがあります。特に、集団の中で自分の立場を確立するために、他者を貶めることで自分を優位に立たせようとするような行動も見られます。
2. 個人の特性や性格の問題
いじめが起こる背景には、いじめる側やいじめられる側の個々の特性や性格も大きく影響します。
子どもたち一人ひとりが持つ個性や性格は、いじめの発生に直接関与することがあります。
自己主張が強い・弱い
例えば、自己主張が強すぎる子どもは、周囲からの反感を買いやすく、いじめの対象となることがあります。
逆に、自己主張ができない子どもは、他者から見下されることがあり、いじめられやすい傾向があります。
このような子どもたちは、自分の特性が原因でいじめに遭うことがあります。
外見や趣味、学力の違い
外見や趣味、学力などの違いもいじめの引き金となることがあります。
例えば、目立つ外見や特異な趣味を持つ子ども、成績が極端に高いまたは低い子どもは、他の子どもたちから異質と見なされやすく、いじめの標的となることがあります。
自己肯定感の低さ
いじめる側の子どもは、自己肯定感が低く、他者を傷つけることで自分を優位に立たせようとする場合が多いです。
彼らは、他者を攻撃することで一時的に自分の優位性を感じ、自己肯定感を得ようとしますが、根本的な問題は解決されないため、いじめ行動が繰り返されるようなこともあります。
3. 学校の問題
学校の環境や風土もいじめの発生に大きく影響します。
学校は、子どもたちが長時間を過ごす場所であり、その環境がいじめの発生に大きく関与することがあります。
教師の目が行き届かない
例えば、教師の目が行き届かない状況や、いじめに対する対応が不十分な学校では、いじめが発生しやすくなります。
教師が子どもたちの行動をよく監視し、問題を早期に発見することが難しい環境では、いじめが長期間続くことがあります。
競争が激しい環境
競争が激しい学校環境や、学力やスポーツの成績で生徒が評価される制度も、いじめを助長する要因となることがあります。
成績やテスト結果に重きを置くあまり、子どもたちの精神的な健康や人間関係が後回しになってしまうことがあります。
この様な場合、失敗を恐れて他者を攻撃することで自分を守ろうとする、などの行動が見られることもあります。
学校の取り組みの重要性
学校全体がいじめに対してどのように取り組むかが、非常に重要です。
学校がいじめを許さない姿勢を明確に示し、いじめに対する教育や予防策をしっかりと行うことで、いじめの発生を未然に防ぐことができます。
教師や関係者が一丸となっていじめ対策に取り組むことが求められます。
4. 家庭の問題
家庭環境もいじめの原因の一つです。子どもたちにとって、家庭は最も身近で長い時間を過ごす場所でもあり、その影響は大きいです。
家庭内の暴力やストレス
例えば、家庭内での暴力や過度なストレス、親の無関心などが、子どもの行動に影響を与えることがあります。
家庭内で適切なコミュニケーションが取れていない場合、子どもは感情をうまく表現できず、その結果、いじめにつながることがあります。
家庭内での緊張や不安が、学校での行動に大きな影響を与えます。
親の影響
親自身がいじめの加害者であったり、被害者であったりした経験がある場合、その影響が子どもに及ぶこともあります。
親が子どもに対して厳しすぎたり、逆に過保護であったりする場合も、子どもの自己肯定感に影響を与え、いじめの原因となることがあります。
親の行動や態度が、子どもの社会的スキルや自己評価に大きな影響を与えます。
親子間のコミュニケーション不足
家庭内で適切なコミュニケーションが取れていないと、子どもは自分の感情をうまく表現できず、フラストレーションが溜まることがあり、これが学校での行動に影響し、いじめの原因となることがあります。
家庭の雰囲気や親子関係は、子どもの行動に大きな影響を与えるので、家庭内での適切なコミュニケーションと、子どもの感情に寄り添う姿勢が重要となります。
いじめが起きる5つの背景
いじめは多くの要因が絡み合って発生する複雑な問題です。ここでは、いじめが起きる背景について、下記5つの観点から考えてみましょう。
1. いじめの加害者の心理や動機
いじめの加害者の心理や動機は様々です。
自己肯定感が低く、自分の存在価値を他者を支配することで確認しようとする子どもや、家庭環境や学校生活でストレスを抱え、そのフラストレーションを他者にぶつける子どもがいます。また、他者との差を強調したり、優位に立ちたいという欲求が強い子どもは、いじめを手段として使うことがあります。
加害者自身も孤独や不安を抱えていることが多く、その内面的な問題がいじめを引き起こす背景となっていることが多くあります。
2. いじめの被害者の特徴
いじめの被害者には特定の特徴が見られることがあります。
例えば、
- 目立ちやすい外見や趣味、学業成績が極端に高いまたは低い子ども
- 自己主張が弱く、他者とのコミュニケーションが苦手な子ども
が、いじめのターゲットになりやすいです。
また、
- 新しい環境に馴染むのが遅い子ども
- 家庭環境に問題があり、精神的に弱っている子ども
も、いじめの被害者になる可能性が高くなります。
これらの特徴を持つ子どもは、いじめに対する耐性が低く、集団から孤立しやすい傾向があります。
3. 学校や家庭での見えにくい問題
学校や家庭での見えにくい問題もいじめの背景にあります。
例えば、教師や親が子どもたちの細かな変化に気づかず、いじめの前兆を見逃すことがあります。
また、学校内での指導や監督が不十分である場合や、家庭内でのコミュニケーションが欠如している場合、いじめがエスカレートしてしまうことが多く、さらに、学校や家庭がいじめの存在を認識しながらも、その対応が遅れてしまうこともあります。
4. 関係者の無関心や対応不足
いじめが深刻化する一因として、関係者の無関心や対応不足が挙げられます。
教師や親がいじめの兆候を見過ごしたり、軽視したりすることで、いじめが継続・悪化することがあります。
いじめの報告や相談があった際に、迅速かつ適切な対応が取られない場合、被害者はさらに追い詰められます。いじめに対する意識の低さや、対応の不足は、いじめを助長する大きな要因となります。
5. テレビやインターネットの影響
現代の子どもたちにとって、テレビやインターネットの影響は無視できません。
暴力的なコンテンツや、いじめを助長するような描写が含まれるメディアは、子どもたちの行動に悪影響を与えることがあります。
また、インターネットを通じて広がる誹謗中傷や、SNSでのネットいじめは、従来のいじめとは異なる新しい問題を生み出しています。
オンラインでのいじめは、匿名性や拡散の速さから、被害者に大きな精神的ダメージを与えることがあります。
いじめが子どもに与える影響
いじめは被害者と加害者の双方に深刻な影響を与えます。
いじめを防ぎ、適切に対応することで、子どもたちが健全に成長できる環境を整えることが求められます。
保護者や教育関係者は、いじめの兆候を見逃さず、早期に対応することが大切です。
1. いじめられた子ども(被害者)に与える影響
いじめられた子どもは、心理的、社会的、身体的、そして教育的な面でさまざまな影響を受けます。
心理的な影響
いじめを受けた子どもは、自己肯定感が低下し、自分に自信が持てなくなることがあります。これにより、不安や抑うつ、ストレスが増加し、精神的な健康が損なわれることがあります。
また、いじめの経験が強いトラウマとなり、長期的に心理的な影響を引きずることも多くあります。
社会的な影響
いじめによる被害者は、友人関係が希薄になり、集団から孤立してしまうことがあります。
いじめによるトラウマから、友達を作ることが苦手となることがあり、学校生活や社会生活において孤独を感じることが多くなることもあります。
また、人間関係に対する不信感が強まり、他者とのコミュニケーションが困難になることもあります。
身体的な影響
いじめは、身体的な健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
ストレスや不安が原因で、頭痛、腹痛、不眠などの身体症状が現れることがあり、極端な場合には、身体的な暴力によって怪我を負うこともあります。
教育上の影響
いじめによる教育上の影響も深刻な問題となります。
いじめの被害者の子どもは、学校に行くことが苦痛になり、不登校になることがよくあります。不登校は、学業の遅れや成績の低下を引き起こし、将来的な進学や就職に悪影響を及ぼす可能性があります。また、学校に対する不信感や恐怖心が強まり、教育に対する意欲や関心自体が失われてしまうこともあります。
2. いじめた子ども(加害者)に与える影響
いじめを行った子どもも、短期的および長期的に様々な影響を受けます。
心理的な影響
いじめを行う子どもは、一時的には利己的な優越感や満足感を得ることがありますが、長期的には罪悪感や後悔を感じることが多いです。
いじめを行う子どもは自己肯定感が低いことが多いため、他者を傷つけることで自分を守ろうとする傾向があり、この悪循環から抜け出せなくなることがあります。
社会的な影響
いじめを行うことで、加害者自身も友人関係が不安定になることがあります。
いじめ行為が発覚した場合、周囲からの信頼を失い孤立することもあり、今度は逆にいじめの被害者となってしまうこともあります。
法的・教育的影響
いじめが発覚し、学校や社会からの処罰を受けることがあります。
これにより、学校生活や学業に支障が出ることが多く、進学や就職においても悪影響が及ぶ可能性があります。
さらに、法的な問題に発展する場合もあり、その場合は将来にわたって大きな影響を受けることになります。
いじめに対する4つの保護者の対応
いじめの問題に直面したとき、保護者としてどのように対応するかは非常に重要です。
日常的なコミュニケーションを大切にし、学校と連携しながら、子供の自尊心を育て、ネットいじめにも適切に対応することで、子供が安心して生活できる環境を作りましょう。
1. 子供とのコミュニケーションを大切にする
まず、子供とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。
子供が安心して話せる環境を作り、日常的に会話をすることで、子供が抱えている問題や悩みを早期に察知することができます。
この様な場合、子供の話をじっくりと聞き、否定せずに受け入れる姿勢が大切です。子供がいじめについて話しやすくなるよう、日頃からいじめに関する知識や情報を共有し、家族間でのオープンなコミュニケーションを心がけましょう。
2. 学校と連携する
いじめの問題に対処するためには、学校との連携が欠かせません。
子供がいじめに遭っていることを察知したら、すぐに学校に連絡し、教師やスクールカウンセラーと協力して解決策を見つけることが重要です。
また、定期的に学校と情報交換を行い、子供の状況を細かく把握するようにしましょう。学校と家庭が一体となって、いじめに対する適切な対応を取ることで、子供の安全と安心を確保することができます。
3. 子供の自尊心を向上させる
子供の自尊心を向上させることも、いじめに対する有効な対策です。
子供の良いところや頑張りを認め、褒めることで自己肯定感を育てましょう。
自己肯定感が高まると、いじめに対する耐性が強くなり、いじめに立ち向かう勇気や力がつきます。
また、子供に対して適切な目標設定を行い、成功体験を積ませることで、自信を持たせることも大切です。スポーツや趣味、勉強など、子供が興味を持つ活動に積極的に参加させ、家族が温かく応援することも効果的です。
4. ネットいじめへの対応
ネットいじめは、現代のいじめの一つの形態であり、特に注意が必要です。
まず、子供にインターネットの安全な使い方を教え、SNSやチャットのリスクについて話し合いましょう。
ネットいじめが発生した場合は、証拠を保存し、すぐに学校や関係機関に相談することが重要です。
また、子供が安心してネットを利用できるよう、プライバシー設定を確認し、適切なセキュリティ対策を行うことが必要です。さらに、家庭内でのネット利用時間を制限し、バランスの取れた生活を送るように促すことも効果的です。
いじめを未然に防ぐための4つの対策
いじめを未然に防ぐためには、さまざまな予防策を講じることが必要です。
ここでは、下記4つの対策について詳しく考えてみましょう。
1. いじめについて学ぶ
まず、いじめについて学ぶことが大切です。
保護者や教師はもちろん、子供たち自身もいじめの問題について理解を深めることが重要です。
いじめの種類や、その影響、いじめに遭った際の対処法などについて学ぶことで、いじめに対する意識が高まり、いじめが発生しにくい環境を作ることができます。
また、学校や地域でいじめ防止に関するワークショップや講演会を開催し、いじめに対する知識を共有することも効果的です。
2. 相談窓口やカウンセリングを充実させる
いじめを未然に防ぐためには、子供たちが気軽に相談できる環境を作ることが重要です。
家庭や学校で、いじめについて話しやすい雰囲気を作り、子供たちが安心して自分の気持ちを表現できるようにしましょう。
具体的には、相談窓口やカウンセリングを充実させ、いじめに関する悩みや不安を誰かに話せるようにすることが重要です。教師や保護者が積極的に子供たちの声に耳を傾けることで、いじめの兆候を早期に察知することができます。
3. インターネット利用のルールを作る
ネットいじめを防ぐためには、インターネットの利用に関するルールを作ることが必要です。
家庭内でのネット利用時間や使用するサイト・アプリの選定、プライバシー設定の確認など、具体的なルールを設定しましょう。
また、子供たちにネットの安全な使い方や、個人情報の取り扱いについて教育することも重要です。
学校でも、インターネットの利用に関する授業を行い、子供たちが適切に利用できるようにするサポート体制も重要となります。
4. 定期的なアンケートを実施する
いじめの実態を把握し、早期に対策を講じるためには、定期的なアンケートの実施が有効です。
学校や地域でいじめに関する匿名のアンケートを行い、子供たちの状況や意識を把握することで、いじめの兆候を早期に発見することができます。
また、アンケート結果をもとに、具体的な対策を立て、改善策を講じることが大切です。アンケートの内容や結果は、保護者や教師とも共有し、一緒にいじめ防止に取り組む姿勢を示しましょう。
いじめにあった時の相談窓口
いじめにあった時には、様々な相談窓口を利用することで、子どもやその家族が必要な支援を受けることができます。問題を早期解決するために、これらの窓口を積極的に活用しましょう。
1. スクールカウンセラー
スクールカウンセラーは、学校内で子どもたちの心の問題やいじめに関する相談に応じる専門家で、子どもが安心して話せる環境を提供し、心理的な支援を行います。
いじめに遭った子どもは、スクールカウンセラーに相談することで、自分の気持ちを整理し、解決策を見つける手助けを受けることができます。また、スクールカウンセラーは教師や保護者と連携し、問題解決に向けた具体的な対応も行います。
2. 教育支援センター
教育支援センターは、地域ごとに設置されている教育相談機関で、いじめや不登校などの教育に関する問題について相談を受け付けています。
専門のカウンセラーや教育専門家が、子どもや保護者に対して適切なアドバイスや支援を提供します。また、子どもの状況に応じて個別のサポートプランを作成し、必要に応じて学校との連携を図ります。
3. 子供の人権110番
子供の人権110番は、子どもの人権問題に関する相談を受け付ける電話相談窓口です。
いじめや虐待など、子どもの権利が侵害されている場合に、専門の相談員が対応し、適切なアドバイスや支援を提供します。匿名での相談も可能であり、子ども自身が安心して相談できる環境が整っています。
また、必要に応じて、法的な支援や関係機関への連絡を行うこともあります。
4. チャイルドライン
チャイルドラインは、子どもが安心して相談できる電話相談サービスです。専門の相談員が24時間体制で対応し、いじめに関する相談や悩みを受け付けます。
チャイルドラインは、子どもが匿名で相談できるため、プライバシーが守られ、安心して話をすることができます。また、メールやチャットでの相談も可能であり、子どもが自分に合った方法で相談できるよう配慮されています。
参照:特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター「チャイルドライン」
その他の相談窓口
いじめに関する相談窓口は他にも多く存在します。例えば、地域の児童相談所や市区町村の相談窓口、NPO法人や支援団体などがあります。
これらの相談窓口では、専門のスタッフがいじめに関する相談を受け付け、適切なアドバイスや支援を提供します。
また、インターネット上での相談サービスや、SNSを利用した相談窓口も増えており、子どもが気軽にアクセスできるようになっています。
参照:ストップいじめ!ナビ
まとめ
いじめの問題は非常に複雑で、多くの要因が絡み合っています。しかし、これらの原因を理解し、子どもたちにとって安全で健全な環境を提供するために、私たち親や教育関係者ができることは多くあります。
子どもたちとしっかり向き合い、いじめの兆候を見逃さず、早期に対応することが大切です。
本コラムが、いじめに悩む保護者の方やお子さんの一助になれば幸いです。
家庭教師のマスターについて
家庭教師のマスターの特徴
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